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リサイクル網、アジアへ DOWA、環境ビジネスに熱

2010年6月14日1時43分

写真:DOWAエコシステムの古賀義人社長=東京都千代田区外神田4丁目、豊間根功智撮影DOWAエコシステムの古賀義人社長=東京都千代田区外神田4丁目、豊間根功智撮影

 元々は銅鉱山の会社だったDOWAホールディングス(旧・同和鉱業)が環境ビジネスを広げ、アジア各国と日本を結ぶリサイクル網を築きつつあります。目指すは「アジア・ナンバー1の環境・リサイクル企業」。グループで環境ビジネスを担うDOWAエコシステムの古賀義人社長に、グループ事業の「変身」の経緯を聞きました。

 近年、インドネシアやタイ、シンガポールなどアジアに廃棄物処理の拠点や処分場を急速に拡大した。「廃家電などの不適正な処理や投棄で起きている環境問題の解決を、私どもの技術でお手伝いしたいと。資源が野山に捨てられることなく循環するようにしたかったんです」と古賀さんはいう。

 その裏には日本の中古家電などがアジアに輸出され、違法なルートに流れている実態がある。「日本は消費者がお金を払い、古い家電を回収する仕組み。その一部がアジアに輸出され、解体され、野山、川に捨てられて環境を破壊する。本来、日本は日本で、アジアならアジアのその国で回収・解体、リサイクルすることが大事。国家間でも、そのための仕組みづくりを進めて欲しい」

 ただ、アジア諸国では技術的に回収が困難なモノもある。そこで「日本に持ってきて、当社の秋田・小坂製錬所で処理する、というアジアのリサイクル網をつくる」というのだ。経済大国となった中国でも、2003年に蘇州にリサイクル工場をつくり、今年3月には、天津市を手始めに中国全土で家電リサイクル事業を展開すると発表した。廃家電の適正処理を図る中国版「家電リサイクル法」の来年1月施行をにらんだものだ。

 グループが環境ビジネスを始めたのは、1980年代後半。円高で国内鉱山が立ち行かなくなったためだ。技術者として入社した古賀さんも社の未来を探ろうと、90年代前半、願い出て米国に留学。そこで売上高1兆円規模の廃棄物処理会社があることを知った。

 「技術を調べると、『ウチでもやれる』と分かった。なぜなら当社は、銅や金、ヒ素なども含んだ黒鉱から、中の金属類を完全回収しようと100年以上やってきたんです」。光明が見えた。

 帰国後、まだわずかな売上高しかなかった環境部門を自ら志願、環境ビジネス拡大を進言するリポートを企画部門に出した。「ところが1ページも読んでくれない。約1時間の押し問答で終わった」

 それが、99年に専務になった吉川広和・現ホールディングス会長らの後押しで変わり始める。多角化で手がけた淡水魚の養殖などが失敗、方向転換するしかなかったのだ。「それで、かつては『今月の売り上げゼロ』といった環境部門の売り上げを山田政雄さん(現ホールディングス社長)らが苦労して伸ばしてきたんです」。そして08年4月、古賀さんがエコシステム社長の座を引き継いだ。

 いま、エコシステムの売り上げは、648億円(10年3月期)でグループの売上高の約2割を占める。だが、古賀さんは満足してない。「あと3年ほどで売上高1千億円に。いずれは売上高の約5割を占める製錬に肩を並べたい」

    ◇

 セ氏1300度の炉から出てきた「溶体」はオレンジ色に輝く。小坂製錬所(秋田県小坂町)で、2008年4月から稼働したリサイクル対応の新型設備。約120億円かけた。

 パソコンや携帯電話の電子基板などを粉々に砕いた「原料」を、ベルトコンベヤーで最新鋭の炉に投入する。それが炉内で溶け、比重が重く沈んだ重金属類を取り出す。回収できる元素は現在、金、銀、銅のほか、レアメタルを含めると17種で、今年度中に19種にする。

 「原料」は、国内や東南アジアなどから集められたもので、小坂はすでに世界有数のリサイクル基地だ。いずれは「アジアのリサイクル網の中核にも位置づけたい」(広報担当)という。

 小坂で年間に回収できる金属は金が5トン、銀が数百トン、銅が8千トンほど。相場次第だが、この3種だけでも合わせて数百億円になる計算だ。金属資源の価格高騰で、廃家電が「都市鉱山」と言われる理由がここにある。

 小坂はDOWAグループ発祥の地でもある。1884年に同和鉱業の前身・藤田組が明治政府から、この地の官営鉱山の払い下げを受け、銅のほか様々な貴金属を含む「黒鉱」の採掘・製錬を続けてきた。鉱山事業は行き詰まったが、その技術がいま廃家電や廃電子機器から貴金属を回収・再生することに生かされている。(編集委員・小森敦司)

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