地元に豊富にある木材などの動植物から生まれたバイオマスを活用する自治体が広がっている。身近な資源を使い、地域の活性化や循環型社会につなげようという試みだ。東日本大震災後に重要性が増した「地域分散型エネルギー」としての期待も高まる。
岡山県北部、森林面積が全体の約8割を占め、林業と製材業が主要産業の真庭(まにわ)市。集成材メーカーの銘建工業の製材所からは木材を裁断する音が響き渡り、機械から次々と小さな木質ペレットがはき出されていた。
バイオマス事業部の坂本規・営業部長は「まだまだ余力はある。年間1万2500トンの生産は2万トンまで伸ばせる」と意気込む。
■廃材を燃料化、年5億円稼ぐ
同社では、製材時に出るかんなくずを専用の機械で固め、ボイラーやストーブの燃料となる木質ペレットをつくる。国内ばかりか韓国にも販路を広げ、年約2億5千万円を売り上げる。
ペレットは自社でも活用する。ペレット、木くず、樹皮などをボイラーで燃焼させてタービンを回し、操業時の電力に使う。夜間は売電もしている。
ペレットは市が助成して導入を促進しているペレットストーブや、他の製材所の木材乾燥用ボイラー、市役所の冷暖房など用途は広がりつつある。
市内でカーネーションを栽培する西山広視さんも利用者のひとりだ。ペレットを燃料にしたボイラーでビニールハウス内を暖め、5月の母の日の出荷に備える。重油の高騰で廃業する仲間が増えるなか、西山さんは「重油とは燃料代がまったく違う」と話す。重油を使っていた時は約5カ月で10万円近くした燃料代が、ペレットでは1千円にも満たない。
真庭木材事業協同組合の堀清専務理事は「バイオマスの活用には量の確保が不可欠」と話す。組合は2008年度に使われない木材を活用する集積基地を作った。間伐材、売れ残った木、近所の人が伐採した木などが持ち込まれる。
持ち込みを促進しているのが買い取り制度だ。木は1トンあたりスギなら3千円、ヒノキは4千円、広葉樹は5千円が支払われる。持ち込まれた木は加工されて製材になったり、製紙用のチップにされたり、余すことなく活用される。
「企業などと20年間にわたり連携し、実証してきた経験が今に生かされている」と、市バイオマス政策課の長尾卓洋総括参事は評価する。
バイオマスは、市に様々な恩恵をもたらせ始めた。
同市によれば、バイオマスの利用量は年間4万1千トンで、約5億円を稼ぎ出す計算だ。重油などからの代替も進み、その量は年間約1万5千キロリットル分。重油の料金を1リットル約80円とすると、約12億円になる。
地元で生産できない重油を購入すれば、金は地域外に流出することになる。しかし、地元でつくられたペレットを購入すれば、地域経済を潤すことになる。
■視察者増え ツアー化
バイオマスの視察が増えたため、観光産業を取り込んだバイオマスツアーを始めた。年間に約2千人が訪れ、「お土産購入など間接的な波及効果もある」(バイオマス政策課)という。
さらに、バイオマスを燃やしても、発生する二酸化炭素は植物が取り込んだもので、温室効果ガスの削減量を定めた京都議定書でも排出量にカウントされない。同市では4万トンの削減効果があり、岡山県の業者などに排出権を購入してもらうことになっている。
農林水産省などが推進するバイオマスに取り組む自治体は全国で318市町村(11年4月)にのぼる。利用可能なバイオマスの量は2億5千万トンを超えるが、間伐材などはほとんど利用されていないのが現状だ。
国は20年には600市町村まで拡大する目標を掲げる。しかし、補助金で設備を整えても活用されない例もあり、民主党の事業仕分けではほとんどの新規事業が見送りになり、農水省はこれまでの効果を検証する作業に追われている。
■〈記者の視点〉成果検証を
バイオマスは今、「曲がり角」にさしかかっている。確かに「補助金漬け」と批判されるような例も少なくない。
真庭市にも多くの補助金が投入された。カーネーション栽培の西山さんのボイラーもそうだ。しかし、採算悪化で仲間が減る中、地元で大切に鉢を育て続ける姿は、机上の議論では計り知れない効果を示している。
これまでの成果を検証するにはいい時期だ。エネルギーの地産地消が求められるいま、目先や省庁利益にこだわらず、地域の自立や活性化につながる活用例を探る時だ。(金井和之)
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〈バイオマス〉 動植物から生まれた再生可能な有機性資源のこと。木くずや間伐材などの木質系廃材、家畜の排泄(はいせつ)物、食品廃棄物など多岐にわたる。エネルギーや堆肥(たいひ)などに使われる。バイオマスを発酵してつくるエタノールなどはバイオ燃料と呼ばれる。