台湾で輸入禁止の「松阪牛」が鉄板焼き店で出されていた。180グラムのサーロインステーキが4380台湾ドル(約1万2千円)=台北市、伊沢写す
台湾人が日本から密輸しようとした牛肉が、桃園国際空港で摘発された。調べに対して「松阪牛」と証言したという=台湾動植物防疫検疫局提供
「松阪猪肉」を熱心にPRする養豚業者の社長。松阪猪肉は豚のほお肉を指す=台北県板橋市、伊沢写す
「牛肉の王様」と呼ばれる和牛「松阪牛」が台湾でも人気を集めている。BSE(牛海綿状脳症)騒動で、日本産牛肉は輸入禁止だが、高級料理店では松阪牛が堂々と登場。名声に便乗した「松阪豚肉」も出回っているが、中には偽装表示もあり、農林水産省は実態調査に動き出した。(伊沢健司、信原一貴)
台湾最大の都市・台北市の台北駅から約4キロ離れた繁華街。複合ビルの地下1階にある高級鉄板焼き店でステーキを注文した。
「松阪牛排(松阪牛のステーキ) 4380台湾ドル」。日本円で約1万2千円。180グラムのサーロイン肉だ。
店の社長夫人は「政府要人や一流企業の幹部も松阪牛目当てに来ます」と誇らしげだが、台湾では01年9月から、日本産牛肉の輸入は全面禁止のはずだ。夫人は急に「需要があれば当然、マーケットはある」と言葉を濁した。
店は、日本人向けの台湾の観光情報サイトにも「松阪牛ステーキがある」と掲載している有名店。衛生署食品衛生処の担当者は「本物の松阪牛が販売されていることは絶対にありえない。仮に松阪牛というメニューがあれば偽の表示だ」と断言する。
だが、台湾の玄関口となっている桃園国際空港では01年以降、松阪牛の密輸が毎年2件ほど見つかっている。動植物防疫検疫局によると、昨年4月、台湾人3人が牛肉108キロをスーツケースに詰め込んで持ち込もうとして摘発された。3人は「松阪牛」と証言した。
密輸には最高1万5千台湾ドル(約4万2千円)の罰金が科せられるが、施泰華副分局長は「密輸が後を絶たないのは、台湾で松阪牛を売れれば大きな見返りがあるからでしょう」とため息をつく。
台北市で日本産食材の輸入コンサルタント会社を経営する日本人男性は「メニューには載せず、お得意様だけに松阪牛を出している飲食店も多い」と明かす。密輸は、台湾北東部にある港町の基隆と沖縄とを結ぶ定期船で運んだりするケースも多いという。