|
【久保智】長時間労働のドライバーたち。彼らの日々は、効率を追求する社会のゆがみを映す。タクシーの運転手に密着した。
「いろいろ工夫しないと稼げないんです」。東京都内のタクシー運転手の男性(44)。大切な仕事道具はスマートフォンの無料通信アプリ「LINE」だ。15人ほどの同僚と常時、やりとりしている。
警察の取り締まり情報だけではない。「きょうはどこがよさそう?」と送れば、「日本武道館でイベント。終わった」と返ってくる。お客目当てに「すぐ行きます」。
仕事前には自分でもイベント情報をチェックする。漫然と道路を流しているだけでは、客はつかまらない。
自動車部品をつくる中小企業に勤めていたが、リーマン・ショックのあおりで2009年春にリストラされた。ハローワークでタクシー運転手の仕事を見つけ、軽い気持ちで応募した。
だが、厳しかった。休憩をけずって車を走らせても、毎月48万円の売り上げノルマはなかなか達成できなかった。道もわからず、客になじられて胃がキリキリ痛んだ。
先輩に泣きつくと、細かなノウハウを少しずつ教えてくれた。イベント情報のチェックもそのなかのひとつだ。
タクシー運転手の給料は完全歩合制であることが多い。男性の会社の場合、ノルマを達成すると、売り上げの53%が運転手の取り分に。だが、それに届かないと、取り分は40%に下がる。毎月25万円程度の給料をもらうには、1回の勤務で4万円は稼がなければならない。ノルマに足りないと、自腹で穴埋めする同僚もいる。結局は得だからだ。