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アスワンで奇跡が起こった

2008年11月8日

  • 筆者 :風間深志

写真フルーカ(帆船)の浮かぶアスワンの湖面/PHOTO by Y.MORINAGA写真ようやく船に乗せたフォレスターとダイナトラック/PHOTO by Y.MORINAGA写真やっと着いたアスワンはとっても綺麗な街/PHOTO by Y.MORINAGA写真ルクソールからコンボイでアスワンへ/PHOTO by Y.MORINAGA

 11月5日(水曜日)。昨夜遅くに着いたルクソールは、エジプトでも1、2を争う歴史の街である。全盛期は新王国時代のころと聞いた。

 その王家の谷にもカルナック・アムン大神殿にも、見所の多い史跡には一目もくれず、朝の5時にホテルを出発する。目指すはルクソールより南に200キロのアスワンだ。

 昔ながらの服装をした人々がロバに乗って、陽が昇るに従ってあちこちへと動き始めていた。ナイルの川の畔で寒そうにしてしゃがみ込んでいた老人のたき火姿が、昔と何の変わりもない姿を見るようで実に印象的だった。

 せっかく早く出られたというのに、国道で警察のストップにひっかかってしまう。「ここからは観光客は午前7時からのコンボイでアスワンに向かう!」――と、無味乾燥、冷酷な警官の言葉に、何を言っても通じない。

ジリジリした思いで7時を迎えた。頭に青い回転灯を付けた紺色のジープを先頭に、われわれの車2台に大型の観光バスが7〜8台、マイクロバス10台ほどが加わって、長い長いコンボイが出来上がった。そして、スピードは? なんと全速力。もたもた走っていると最後尾のジープが非常灯をつけて「早く行け!」とあおり立てて来る。おかげでアスワンまでは早かった。が、到着の時間は午前10時39。

 万事休す!と思いきや、天はわれわれを見放さなかった。優しいアスワンのエージェントが、貨物船の出港を待たせておいてくれたのだ。

 その後は、息継ぐ暇もなく目まぐるしい通関作業、ナンバープレートの返還から各種書類の製作など、あちこち走りまわって、午後3時半に車の乗船完了。バンザイなのだ。この出入国の作業を、これから先まだ9カ国でやらなければ、最終目的地のケープタウンには行けないのだ。

 カイロを出発した時には考えられなかった難題を克服して一息、急にアスワンの美しさが目に飛び込んで来た。広々としたナイルの湖面に浮かぶ“フルーカ”と呼ばれる小さな帆船。その様はまるで湖に浮かぶ優雅な白鳥の姿のようだった。

11月6日(木曜日)、晴れ。昨日、車を無事に船に乗せ、明日の人間の乗船を前にホッとした気分の中の休日である。ちょうどいいタイミングといって良い。こちらは恥ずかしい話しだが、ここまであまりに休む暇もなく、長距離ドライブや山積した問題処理で、どうやら腹の具合が神経性胃炎(想像だが)になってしまったようだ。

 ホテルの屋上で椅子に座り、原稿を書きながらアスワンに浮かぶフルーカを眺め、お茶を飲む。腹の痛みは収まった。

 他の皆はカメラをぶら下げて散歩をしたり(盛長/佐藤)、明日からのスーダンへの入国に備えマラリアの予防薬を買ったり(真志喜)、散髪をしたり(チェリーとジャンポール)、明日からの鋭気を十二分に養ったのだった?

プロフィール

風間深志

かざま・しんじ。冒険家。1950年、山梨県出身。85年、バイクでエベレスト登攀、標高6005mの世界記録樹立。87年、バイクによる北極点到達。92年、バイクによる南極点到達。いずれも史上初。ほかバイクによる冒険、レース参加等多数あり。88年より『地球元気村』(その後NPO法人化)を運営。全国各地をフィールドに自然を軸とした地域づくり・人づくりに取り組んでいる。

 主な著書に『地平線への旅』(文芸春秋)『2DKと大自然』(大和出版)『10万回のキャスティング』(インフォレス)など。

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