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高原の国エチオピア

2008年11月18日

  • 筆者 :風間深志

写真ハードな道が続いたゴンダールまでの山道写真エチオピア国境の町ワイナ写真ゴンダールの市内を一望に見下ろす高台から写真まるでネパールを走っているようなレイクタナまでの高原の道写真こんな岩があっちこっちにあった

 11月14日(金)。午後1時30分、ゲダレフの街から道は徐々に標高を上げる。スーダンの国境を越え、エチオピアに入った途端だった。がぜん風景に草木の緑が多くなり、木の丈が家屋の屋根を越して見えるのだった。

緑の木々に囲まれた家々のたたずまいは、砂漠ばかりを見て来た目には、何ともいえない潤いと安定を感じさせる。やはり生活に「緑」は必須だ。3原色は「大地の茶」「河川の青」「草木の緑」でなければならない。

 エチオピアは古い歴史を持つキリスト教の王国だった。あのモーゼやシバの女王なども登場する古代の史跡、あるいは高原のさわやかな空気を求めて、世界中から多くの観光客を迎えている。

国境から観光都市ゴンダールまでの道は、2000メートル近い標高差がある「ものすごい」のつく悪路だった。もうもうと砂ぼこり立ち込める、村から村をつなぐ道。地図には記載されていないほど小さな集落の家。家と呼ぶにはほど遠く、四方に何本かの丸太を組み上げ、それに葦の屋根をつけただけのものだった。のぞきこめば、子どもを背負う主婦が夕げの支度をする姿。ここにも人の生活と人生があるのだなと思うと、正直、日本に生まれてよかったな、と思う自分がいる。

標高2500メートル、途中の峠道で夜を迎えた。真っ暗闇の自分の立つ大地よりもさらに下方に光る、赤いおぼろげな満月に感動する。

 夜9時20分、ようやく峠を越えてゴンダールの街に着いた。本日の走行388キロ。

 11月15日(土)、晴れ。朝の気温19度。さすがに高原の朝はすずしい。久々に温かいフリースを羽織りながら朝飯を食べる。昨晩は街に入った途端、車に走り寄る地元の少年に案内を頼み、安い宿を探してもらった。少年の狙いはもちろんガイド料だが、その足の速さには驚いた。さすがは世界記録を作るランナーが輩出する国、と思わせる姿だった(聞けば家のない子どもたちで、生きて行くのに必死なのだそうだ)。

 今日の走行は、エチオピア最大の湖・タナ湖畔にあるバハール・ダルの街までの210キロ。道路の状態も良く、まるでネパールを思わせるような景色の中をひた走る。緑に恵まれた大地は余すところなく畑として使われ、高い山の山頂近くにまで粟や麦、トウモロコシが植えられ、草原は山羊や牛の牧畜が盛んだ。ナイルの周辺には川にへばりつくようにして人の生活があったが、エチオピアの高原の草木の中にもまた、たくましい人々の生活があった。

 トウモロコシを売る少年から、ためしに1ブル(約11円)を出して焼きトウモロコシを買ってみた。香ばしい匂いで美味そうだが、固すぎて歯が立たない。が、一粒一粒をしっかりと奥歯で砕き噛み締めると、次第に味が出て来てついにはやめられなくなる。砂糖や調味料ばかりに侵された日頃の食生活から考えると、普段からこういうものばかりを食していれば病気と無縁でいられる!と思った。

 快適なドライブを楽しんでいるうちに、ヤシの木の立ち並ぶ目的地、ハバール・ダルに着く。ブルーナイルの源流に位置し、美しい青色の湖面を想像したタナ湖の水の色は、なんと褐色だった。実際には数日前に雨が降って上流の砂が湖に流れ込んだのだろうが、エチオピアの人は冗談が上手い?

 (PHOTO by Y.MORINAGA)

プロフィール

風間深志

かざま・しんじ。冒険家。1950年、山梨県出身。85年、バイクでエベレスト登攀、標高6005mの世界記録樹立。87年、バイクによる北極点到達。92年、バイクによる南極点到達。いずれも史上初。ほかバイクによる冒険、レース参加等多数あり。88年より『地球元気村』(その後NPO法人化)を運営。全国各地をフィールドに自然を軸とした地域づくり・人づくりに取り組んでいる。

 主な著書に『地平線への旅』(文芸春秋)『2DKと大自然』(大和出版)『10万回のキャスティング』(インフォレス)など。

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