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大自然、それは生きることの輪郭を映し出す 〜おわりに

2009年10月27日

  • 筆者 :風間深志

写真拡大最終ゴールの全メンバー

写真拡大われわれをサポートしたクライスラーとソーラーシステムを搭載し たトレーラー(完璧だった)

写真拡大スポンサーとして応援してくれたみなさん

 10月19日(月)。ほぼ2カ月振りの帰国。空港で皆と別れ、毎度のことだが軽いカルチャー・ショックを覚えつつ東京の自宅へ。狭くごちゃごちゃとした都内の道路は、とても自転車が走れるような環境ではない。人々のひしめく大都会の生存競争も、また過酷なのだ。

 オーストラリアは広過ぎるほどにデッカい大陸だった。荒野の主、厳しい野生の環境に生きるカンガルーたちは、乾ききった大地で何万年もの命を今につなぐ。空から時折落ちてくる雨は、すぐさま地面に吸われる。カンガルーたちは危険なアスファルトの水たまりを求めて出没し、不運にも車に跳ねられて無惨な死をとげる。可哀想な光景だが、道路はおびただしい数のカンガルーの死骸でいっぱいだった。

 自転車で走り抜けた5150キロ。広大なナラボー平原を身をもって体験し、干ばつと闘う農業も見た。そして、世界のどこよりも美しかった南氷洋、さらには大規模な森林の焼け跡からの人々の復興の姿など、どこまでも続くデッカい青空の下で、人も動物も生存の持続には「真剣勝負」だった。自然を背景にすると、映し出される者の生き方の輪郭がハッキリと見えて来る。

 そんな中へ、私たちは体に障害を抱える者同士として集結し、一つの目標に向った。障害を乗り越え、目標に向って頑張ることの意味、そして何より「障害」とは一体何なのだろうか?――と、同行者に整形外科のドクターも交え、双方の立場から自転車のペダルを踏みながら考えた。

 結果は――。大自然の中にあって、人間は「元気」でいることが最も素晴らしい、と実感した。そのための健康管理、障害者だからこそ人生にポジティブに取り組む姿勢を大切にしたい。また、それを支える医療環境は、常に最善のシステムの構築をめざしてほしい。医者も常に教育と実践と研究の姿勢で臨んで行きたいものだ。

 ――と、真っすぐな結論で結んだ。

 最後に、この旅を支えて下さったスポンサーのみなさま、そして「運動器の10年・日本委員会」の先生方、さらには現地に駆けつけて一緒にペダルを漕いでいただいた5人の先生方と、この旅をサポートしてくれた全員のみなさんに感謝の意を込めて、このレポートを終わりたいと思います。本当にありがとうございました。

 今後、2010年2月〜3月末にかけて、障害者100人による日本縦断駅伝・国内キャンペーンを予定しています。また、6月からは南米・北米・グリーンランドを越えて、「運動器の10年」世界大会のわれているスウェーデン本部にゴールして、4年間を費した世界一周キャンペーン活動を完結する予定です。

プロフィール

風間深志

かざま・しんじ。冒険家。1950年、山梨県出身。85年、バイクでエベレスト登攀、標高6005mの世界記録樹立。87年、バイクによる北極点到達。92年、バイクによる南極点到達。いずれも史上初。ほかバイクによる冒険、レース参加等多数あり。88年より『地球元気村』(その後NPO法人化)を運営。全国各地をフィールドに自然を軸とした地域づくり・人づくりに取り組んでいる。

 主な著書に『地平線への旅』(文芸春秋)『2DKと大自然』(大和出版)『10万回のキャスティング』(インフォレス)など。

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