2009年6月5日
モータースポーツファンが目にするほとんどの記事は、自動車ジャーナリストという方たちによって書かれています。誰でも今日から名乗れる職業ですから、ものすごく造詣の深い方から、常識さえ知らない方までいろいろいらっしゃるわけです。読まされる方は書いた人がどんなレベルか知らないわけですから、油断なりません。
かくいう私も、大昔はそういう肩書で海外試乗会に行ったりメーカー取材をしたりしていましたから、よくわかります。ハッキリ言ってちゃんと取材して裏をとって書いている人は実はごく一部で、人の書いた記事を寄せ集めてでっちあげたり、プレスリリース丸写しで終始する人、やたら尺度の狭い批判ばかり書きつらねる人など、たくさんいます。
というわけで、私は読者の皆さんに本当のル・マン24時間レースをお伝えしたいと思い、参加する側からの視点でリポートしてみたいと思います。
さて、ル・マン24時間レースは1923年に第1回が開始された、世界でもっとも有名なスポーツカー耐久レースです。この偉大なレースの主催者団体、ACO(西部自動車クラブ)は1906年、ル・マン市に誕生しました。ル・マン市はフランス西北部、パリから西北西に200kmほどのサルト(Sarthe)県にある人口約10万人の都市です。
このル・マン市の中に普段からあるブガッティサーキットと一般路をつないで、毎年13.5kmにもおよぶ特設サーキットを作るわけです。レース2週間ほど前に行くと、こうした道路工事も見られてなかなか楽しいものです。
ACOという組織の決定力は絶対的で、レースのすべての事が決まります。良い事も悪い事も、ACOのさじ加減なのです。でも、24時間レースを開催するにはこういった強い組織が必要ですし、誰も文句は言いません。
ACOは基本的にボランティアの組織ですが、ものすごい収益を上げる営利団体ともいえます。チームは表面上エントリーフィー(参加料)を払うだけですが、それだけではレースはできません。タイヤメーカーなどは莫大な出展費を払ってブースを作りますし、パドック内外の飲食店などはもちろん高いショバ代を払っています。たとえばパドック近くでビールが少し高いなと思っても、店主のもうけはほどほどで、結構な額をACOに寄付していると思ってやってください。
で、今年横浜ゴムさんのタイヤを使用するのは全チームの中でウチだけになっちまったんです、諸般の事情で!(泣)というわけで横浜ゴムさんの方も、1チームだけのためにブースを作って膨大な予算をかけることはできないわけでして、困ってしまったのです。
どうしたかというと、ウチでお金払って(100万円以上)パドック裏にトラック1台分のスペースを借りて、そこでタイヤチェンジャーとバランサーを使ってタイヤ交換をするわけです。
レース中、私たちが飯を食ったりするホスピタリティーブースも、そこに来るケータリングのスタッフにも、ドライバーが仮眠するキャンピングカーとその駐車スペースにも、お金がかかります。何しろお祭りなんですからしかたありません。
このルマン24時間レースは、フランス人にとって特別なイベントなのです。ル・マン24時間レースは、自転車のツール・ド・フランス、テニストーナメントのロラン・ガロスと並びフランスの3大スポーツイベントに数えられますからね。また、カートのインディ500、F1のモナコ・グランプリと並ぶ、世界の3大自動車レースのひとつでもあるわけです。
GT1クラスからエントリーするランボルギーニ・ムルシエラゴRGT―LMは、新しく作ったのですが組み上げが遅れました。先日、鈴鹿のGT合同テストで、GTマシンとしてちゃっかり登録をしてシェイクダウンを済ませました。今は空輸されておフランスに!
というわけでレース前、いろいろ雑用の忙しい中、リポートさせていただきました。そう! 忘れてならないドライバーは、イタリア人の元F1ドライバー、マルコ・アピチェッラ、日本からは余郷敦、山岸大というラインナップで参戦です!
JLOC(日本ランボルギーニオーナーズクラブ)広報と、スーパーGTレースはTeam JLOCマネージャー兼、87号車の監督を務める。JLOC公式サイトも制作・管理している。自動車雑誌「GENROQ」元編集長だけあって、スーパースポーツカーに関しては世界的レベルの専門家。数十万円掛けたマウンテンバイクで、浅草界隈を毎日走るのが目下一番の趣味。 JLOC公式サイト http://www.jloc-net.com/