現在位置:asahi.com>愛車>イタリア発アモーレ!モトーレ!> 記事 ![]() 修道女、2馬力で暴走2008年02月15日 ■今年も来ました、お約束イベント
欧州最大級のヒストリックカー・ショー『レトロモビル』が、今年もパリで17日まで開催されている。古いクルマファンにとって、毎年お約束の10日間である。 主催者によると、第33回の今年は320の出展者がスタンドを並べた。予想入場者数は昨年同様10万人という。ボク個人的には、このイベント詣では12年目となった。 2月という時節柄、フランス人のクルマ仲間がみんな元気に年越ししたことを確認できる良い機会である。 しかし年々通ううちに、「いつ行ってもほぼ同じ顔ぶれ、ほぼ同じメーカー」というのも正直なところで、数年前から少々刺激が欲しくなってきたのも事実だ。 ■その心は「国民的映画」 それはさておき、今年のテーマは「シトロエン2CVの60周年」である。2CV、通称「2馬力」は、言わずと知れた戦後フランスを代表する大衆車だ。 1948年のパリ自動車ショーにおける発表直後は、あまりの簡素さに従来の自動車愛好家は戸惑いを隠さなかった。 しかし発売されると、それまでクルマを所有できなかった人々の圧倒的な支持を得た。そして1990年にポルトガル工場で生産が完了するまで、商用車仕様も含め500万台以上が世界中に送り出された。 会場では、さまざまなクラブがメーカーの協賛を得て歴代2CVを展示した。その中のひとつ、クラブ・シトロエン・フランスは、1958年型2CVに修道女のマネキンを添えた。 これは今年の第2テーマである「女性と自動車」にかけたものであるが、実は映画の名登場人物である。その映画とは、ミドルエイジ以上のフランス人なら誰でも知っている1960−1980年代の娯楽映画「ジャンダーム(憲兵)」シリーズだ。 ストーリーの舞台は南仏のリゾート地サントロペである。シリーズは全6作からなるが、ほぼ全編にシトロエン2CVに乗った若い修道女が登場する。 暇なときには海岸で水着になって日光浴をいそしんだり、と普通の修道女ではない彼女は2CVを足にしていて、運転はきわめて荒い。 そのため2CVをたびたび解体状態になるまで酷使してしまう。しかしその快速のおかげで、喜劇俳優ルイ・ド・フュネス演じるクルショーという名のジャンダームは何度も助けられる。 ■激辛チップではなくフランスパン 思えばレトロモビルには、この「ジャンダーム」のシーン再現が多い。昨年は2CVの派生車種であるレジャーカー『メアリ』のクラブが、第5作「ジャンダームと宇宙人」のワンシーンを再現していた。 UFOからの妨害電波を受けてエンストしてしまったメアリを、クルショーが奮闘して修理する場面である。 本来メアリのパワーユニットは水平対向2気筒であるにもかかわらず、クルショーがエンジンルームから取り出すのは直列4気筒という、全世界のシトロエンおたくの突っ込みが入りそうなシーンである。 さらにもっと以前のレトロモビルでは、フォード・マスタング・クラブの面々が、運転席に「はりぼて」で製作したクルショー人形を乗せていた。第1作「サントロペのジャンダーム」で絵画盗難事件の容疑者のクルマとしてマスタングが登場するからだ。 いずれも展示車の脇には、映画との関連を示す詳しい解説がなかった。わかる人だけがニヤッと笑って眺めたり、写真を撮ったりしている。 お笑いや駄洒落で、何が面白いのか説明するほど不粋なものはないから、これでいいのだろう。 当時超人気で、今でもときおりテレビで再放送されている作品の成せる業である。それにしてもクルマがこんなに出てくる国民的映画があるとは。我らが「寅さん」がクルマに乗らなかっただけに、フランス人が羨ましいかぎりだ。 レトロモビルに「何か刺激を」と思ったボクだが、実は訪れるほうにも「フランス人が喜ぶツボ」に関する知識が求められていたのである。 同じ味覚でも、ショーカーが怒涛のごとく登場するモーターショーが激辛ポテトチップなら、レトロモビルは噛みしめて味わうフランスパンなのである。 プロフィール
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