現在位置:asahi.com>愛車>イタリア発アモーレ!モトーレ!> 記事 ![]() クルマを捨てたジャンさん2008年02月22日 ■やめたいけど、やめられない
本欄にはクルマに熱い思いを抱き、クルマと幸せな生活を送るヨーロッパの人々が登場する。しかし、ボクの周囲には、クルマに乗らなくても幸せな人もいる、というのが今回の話だ。 といっても、「そうした人たちの姿も伝えるのがジャーナリストの使命」などと大上段を振りかざしたいのではない。 ボク自身の自動車保険の支払い日が迫ってきて思いついたお話だ。昨年、消費者団体フェデルコンスマトーリが発表したデータによると、イタリアでは過去10年に自動車保険が135%も値上がりし、その上昇率は欧州一だという。 10年前、この国で運転を始めて以来、無事故のボクだが、等級上昇による減額が値上げに相殺されてしまう。おかげで保険料が減った年は稀だ。 今年はいよいよ車両保険なしにして、何とか凌ごうと考えている。それでも円にして7万円を超える。 ときおり「いっそレンタカー生活に切り替えるか」とも考える。だが、イタリアで地方のレンタカー営業所は土曜午後と日曜は休みだ。いちばん使いたいときに使えない。 そのうえ、車両置場を確保するため、中心部からちょっと離れたところにある。そこまで重い荷物を引きずっていくのを考えると現実的ではない。 残念ながらイタリアの地方都市で、クルマなしの生活はまだ当分考えられないようだ。
■ジャネーヴの本格日本ファン ここに紹介するのは、スイスの知人ジャンさんである。ジュネーヴで一人暮らしをする定年退職者だ。現役時代は博物館の学芸員として、さまざまな企画展にあたっていた。 彼は自他ともに認める日本ファンである。「以前はスバルを持っていたよ」という。だが、今は自動車を所有していない。 「ジュネーヴは、市電やバス網が便利だからね。やめちゃったんだ」 彼の日本趣味はクルマのブランドといった表面的なものではない。もっとディープなものだ。 毎年、春か秋に日本を訪ねる。それもよくいる外国人観光客のように浅草・アキバ徘徊などはとうの昔に卒業している。かわりに東京からいきなり新幹線に乗って山陽地方を巡ったり、昨年は七宝焼き、今年は弓道と様々なものをたしなんだりして来る。ボクなどよりも、よほど「ニッポン人している」のである。 2年前、新たに1DKのアパートに引っ越した。日本的住環境を極めるためだ。靴は玄関で脱ぐようにした。 畳の間に日本刀が鞘なしで飾ってあるのには少々“びびる”が、それを除けばハリウッド映画に出てくる悪徳日系企業のような疑似オリエンタル・ムードは一切見当たらない。 昨今の日本における安普請の住宅より和風な内装である。聞けばジャンさん自ら内装の図面を引いて、素材にこだわったのだという。ベッドはなく、畳の上に布団を敷いて寝る。 テラスに巨大な庭石があるので聞いたら、「さすがにこれは舞台用のプラスチック製。エレベーターで下から運んできたんだよ」と笑いながら教えてくれた。
■ロヤコドン 年1度の日本漫遊に、理想の住まいづくり、か。本人は「クルマにかけるお金が減ったおかげで」とは言っていない。それにそもそも現在の生活は現役時代の労働の賜物であろう。しかし、ジャンさんの生活は明らかに悠々自適である。 だから冒頭のようにクルマ維持費に頭を悩ませるボクとしては、彼を見るたび、「ああ、こういうお金の使い方、人生の楽しみ方もあるんだな」と、つい羨ましく思ってしまうのだ。 ちなみに本格派日本ファンのジャンさんゆえ、ボクが困るのは土産物だ。日本の土産店で売っていながら日本人が絶対着ないガウン式「キモノ」など持って行ったら、「バカにするな」と張り倒されそうだ。 最近は、彼の好物である真空パックの「うなぎ」を持っていくことにしている。ところが、それとは別に「ロヤコドン」も好きだという。 ボクが行ったことがない、いや今後も一生行かないであろう日本の山村までウロウロしている彼のこと。どこかで発見したカルト産品か? 外国人に日本のうんちくを披露されるほど悔しいものはないが、もう少し詳しく追及することにした。 すったもんだの挙句、しばらくして判明したのは「L’oyakodon」だった。親子丼に、わざわざフランス語の定冠詞を付けないでくださいよ、ジャンさん! プロフィール
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