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イタリア発アモーレ!モトーレ!

俺は電気だ心配するな

2008年03月28日

■自転車の次はカーシェアリング

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パリのヴェリブ用自転車とステーション

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シンク・シティと同社のヘクルント営業部長

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バスカップ・シティEカー

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バスカップのジャン―マルク・メテー会長

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ルメネオ・スメラ

 3月21日、パリ市議会で現職のドラノエ市長が再選された。ドラノエ氏といえば昨年7月、市民を対象にした自転車レンタル−シェアリング『ヴェリプ Velib’』をスタートさせた。広告大手JCドゥコー社との共同プロジェクトである。

 パリ市によると、発足当初は10,648台が投入され、750ステーションが設置されたが、2007年12月には20,600台、1451ステーションにまで増やされている。それに伴い自転車専用レーンも着々と整備が進められている。

 ドラノエ市長が次に始めようとしているのが、カーシェアリングである。同様の試みを2003年に始めたリヨン市にならうもので、パリでは来年2009年の開始を計画している。 名前もリヨンに従い、『オトリブAutolib’』になるらしい。

 参考までにリヨンのオトリブ料金を記すと、年間登録料が18ユーロ、預託金が150ユーロ、無返還の補償金が500ユーロだ。

 ルノー・トゥインゴ級の場合、基本料金2.1ユーロ+日中1時間あたり2.1ユーロである。夜23時以降朝7時までは、時間あたり料金が無料となる。保険、維持費、燃料、専用駐車場の費用・料金はすべて含まれている。

 パリのオトリブがリヨンと違うのは、投入される車両が電気自動車であることだ。すでにカーシェアリングは欧州の一部都市で導入されているものの、これだけ大規模に電気自動車を用いたカーシェアリングは、パリが初めてである。

 だがヴェリブ自転車を1年足らずで一気に普及させたパリ市である。電気自動車シェアリングも成功の確率は高い。

■大企業から小工房まで

 パリ市はオトリブ計画に100以上の充電ステーションを設置し、2000台を導入する計画といわれている。となると当然ながら、納入するのはどのメーカーかが話題となり、実際さまざまな憶測が飛んでいる。

 その有力候補といわれているのが、前々回の本欄でふれたノルウェーの『シンク Th!nk』である。最新型『シティ』は、ナトリウムもしくはリチウムイオン電池と、19〜28キロワットのモーターを組み合わせ、1充電の連続走行180km、最高速100km/hという。アルミフレームに被せられたボディパネルは、小さな傷がつきにくいABS樹脂製だ。

 3月開催されたジュネーヴ・モーターショーには、カーシェアリングを意識したものに留まらず、様々な電気自動車のプロトタイプが出展された。たとえば電池メーカー・バスカップ社の『ブル−Eカー』はリチウムメタル・ポリマー電池を用いている。充電できる回数はまだ約1000回だが、1充電の連続走行250km、125km/hの連続走行が可能という。

 現在のプロトタイプは2005年に公開したピニンファリーナ・デザインによる3ドア・3人乗りだ。しかし同社のジャンマルク・メテ会長によれば、今秋発表する新型はまったく違う4ドア高級車で「エコロジーに深い関心をもつ、高いレベルの顧客をターゲットにする」という。そうした顧客が欧州にも潜在する可能性をメテ会長は、レクサスのハイブリッド車を例に挙げて語った。

 なお電気自動車も電池を長持ちさせるこつは、なるべくフル充電と(クルマだからなかなか難しいが)使い切りの繰り返しであるそうだ。携帯電話やシェーバーと同じである。参考までにバスカップ社の親会社は、社主がニコラ・サルコジ仏大統領と親交があるボロレ・グループである。

 また社員17名のベンチャー企業ルメネオ社は、2人乗り電気自動車『スメラ』を発表した。全幅わずか80cmのボディは、何やら昭和30年代の懐かしシネスコ映画をテレビで放映したときの画面を思いだす。

 ただしメカニズムは立派だ。駆動輪である後輪にはそれぞれ1基ずつのモーターが与えられていて、ディファレンシャル・ギアのかわりに電子制御で左右輪の回転差をコントロールする。

■面白い時代になってきた

 ふと思いだしたのは、今から13年前だ。当時ボクが勤めていた出版社で、電気自動車の本を出すことになった。

 ボク自身は担当ではなかったが、タイトルは編集部員全員で考えることになった。担当者に聞けば、「速度が出ない、連続走行距離が短いといった電気自動車の欠点は日々克服されつつある。既成概念を払拭し、その明るい未来を告げる本にしたい」という。

 それを知ったボクが「これしかないでしょう」ということで考案したタイトルは、ずばり『俺は電気だ心配するな』だった。元気と電気をかけたものである。

 上司たちの会議の日、平社員のボクは自分の机で決定を待った。しかし結果は、まったく違うタイトルに決まった。

 ああボクにはコピーライトの才能もないんだという落胆と、洒落のわからない会社に対する腹立ちが入り混じり、つい辞表を出してイタリアに来てしまったのはその半年後のことだった。

 それはともかく、さまざまなスケールの企業が、さまざまな電気自動車のアプローチを始めた。そして市街での使用なら本当に「心配するな」といえる電気自動車が現実になり始めた。なにやら面白い時代になってきたではないか。

 なおボクが初めて電気自動車をレンタルした暁には、昔の悔しさを晴らすべく「俺は電気だ!」と高らかに叫ぼうと思っている。

プロフィール

大矢アキオ Akio Lorenzo OYA
 歌うようにイタリアを語り、イタリアのクルマを熱く伝えるコラムニスト。1966年、東京生まれ、国立音大卒(バイオリン専攻)。二玄社「SUPER CAR GRAPHIC」編集記者を経て、96年独立、トスカーナに渡る。自動車雑誌やWebサイトのほか、テレビ・ラジオで活躍中。
 主な著書に『イタリア式クルマ生活術』『カンティーナを巡る冒険旅行』、訳書に『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(いずれも光人社)。最新刊は、『Hotするイタリア―イタリアでは30万円で別荘が持てるって?』(二玄社)。


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