現在位置:asahi.com>愛車>イタリア発アモーレ!モトーレ!> 記事 PR情報![]() その時計、いい加減2008年04月18日 ■サマータイム
日本で生活していた時代、「サマータイム」といえばジョージ・ガーシュウィンの名曲でしかなかったが、イタリアに住むとサマータイムは体感するものになった。 他の西欧諸国と同様、イタリアでも3月の最終日曜日からサマータイムに切り替わる。 今年も先月30日に実施された。これから10月の最終日曜日まで、日本との時差は冬時間のマイナス8時間に対してマイナス7時間になる。 公式な切り替えは、午前2時に時計を1時間進めることによって行われる。我が家の場合は、当日の朝起きて家中の時計を調整する。踏み台に登り、掛け時計を外すたび埃をかぶる。マイカーのデジタル時計を進めようとすると、何年やってもその操作法を忘れている自分に気づいて情けなくなる。 冬時間への切り替えも含めると、年2回の大イベントである。ただし、イタリア人がみんな時計を目の仇にして調整しているかというと、そうでもない。 だから駅のホームの時計こそ切り替えるものの、それに付属したバールなどは、しばらく前の時間のまま放置されていることが多いから要注意だ。 大都市はともかく、郊外のバスターミナルの時計も、気をつけたほうがいい。公園など、街の時計もすぐに調整されないものが多い。 サマータイムの告知は、意外に少ない。テレビニュースでは前日と当日にほんの数秒のアナウンスが流れるのみ。新聞も1面の片隅に時計の図と共にに小さく記されるだけだ。 したがって笑い話も起きる。知り合いの店員アンナおばちゃんのエピソードもそのひとつだ。 ある日いつもどおり「朝7時」にバスを待っていたのだが、なかなか来ない。周囲を見回すといつもより暗い。そのうえ、店に到着して開店しても客が来ない。 ようやくしばらくして、おばちゃんは冬時間の初日をうっかり忘れていたことに気づいたそうだ。バスが来なかったのも、ダイヤはきちんと6時台に変更されて運行されていたためだった。 ■時計ウォッチングは楽し 前置きが長くなったが、今回は街の時計の話である。 ボクにとって旅の楽しみのひとつは、駅や空港など、公共空間における時計のデザインを眺めることだ。誰もが認める秀逸なものは、ドイツ鉄道(DB)やスイス鉄道(SBB/CFF/FFS)の構内時計であろう。 遠くからでも、ひと目で何時か一発で確認できる。鉄道の時計としては究極ともいえるデザインである。 ドイツ、スイスの駅用時計とも、日本ではそれらのデザインを復元した腕時計が10数年前から一部で販売されていたので、ご存知の方は多いと思う。 ただし個人的には、フランス国鉄(SNCF)の黒地に黄色の目盛りの時計のほうが洒落ていると思う。機能的にもそこそこで、見るたびに“しびれ”る。同じ駅用でも前述のドイツ/スイス物vsフランス物が醸し出す雰囲気の違いは、さながらメルセデスSクラスとシトロエンC6のムード差に通じる。 いっぽう公共のものにしては妙にゴージャス感が漂うのは、ジュネーヴの見本市会場にある時計だ。会場内の至るところにあるものだ。 1830年にその歴史を遡る高級腕時計メーカー、ボーム&メルシエのネームが、控えめに記されている。もちろん、同社のパブリシティも兼ねているのだろうが、時計産業で栄えた街に相応しい。 ■温泉地の時間 それらとは別にボクが密かに気に入っているのは、南ドイツ・バーデンバーデンの広場にある時計である(5番目の写真)。 30度の切り欠きが入れられた黒い円盤が、12色に等分された盤面の上をまわってゆく。1色なら正時、2色が半々に見えていれば○時30分である。その前後の時間は、2色の配分を見てイメージする。 もともとこのアイディアは、ベルリン生まれの建築家ティアン・ハーランによって1970年代初頭に考案されたものである。のちに腕時計として『クロマクロン』等の名前で製品化され、ハーランの名を世に知らしめた。バーデンバーデンの広場の時計は、1978年に設置されたものという。 おおよその時刻しかわからない時計は、欧州屈指の高級温泉保養地に穏やかな時間を提供している。 ついでにいえば、駅の時計には几帳面さを求めるにもかかわらず、リゾートではこのような時計で過ごせてしまうドイツ人のメンタリティの切り替えが痛快でもある。 ところでこのほど東京では、歩行者用信号で従来の「赤」の待ち時間表示に加えて、「青」の残り時間も表示する試験を始めた。 これもひとつの時計であると考え、バーデンバーデンの言わばいい加減な時計と比べてみる。 すると「計るものによって、そこに流れる時間の速さと質が変わる」ことに、自ずと気づかされるのである。 プロフィール
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