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イタリア発アモーレ!モトーレ!

「ヴィッツ」でヒッパレー!

2008年05月09日

■トップ3入りする日本車

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パリ・ポンピドーセンター近くの街路で

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現行モデル2台が偶然に。ボクが住むシエナで

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カルメロ&ロージィ夫妻と初代ヤリス

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故郷シチリアへもヤリスで帰省するという

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裏庭のガレージにはトレーラーが

 その昔、イタリアの街角で写真を撮れば、元祖フィアット500が1台は写っていた。フランスではシトロエン2CVかルノーR4がかなりの確率で画面に入った。

 今日、両国で何気なくシャッターを切って、たびたび偶然写っていることに気づくのは、ずばりトヨタ・ヤリス、日本名ヴィッツである。欧州市場用ヤリスは、2001年からフランスのバランシエンヌ工場で製造されている。

 これが売れている。たとえばイタリアでは今年2月の登録台数で5447台を記録し、7位につけている。セグメントBといわれるクラスでは、フィアット・グランデプント、フォード・フィエスタに次ぐ3位をキープしているのだ。

 なおヤリスには、日本のヴィッツにはない1.4リッターのターボディーゼル版があって、こちらでは人気を博している。

 またイタリアでは、今回の写真を見てもおわかりのように、たとえヤリスでも渋めの色やシルバーメタリックが好まれている。それを反映するように、現行の2代目モデルでは7色用意されているが白の設定はない。ヴィヴィッドなカラーは赤一色のみだ。ボクなどは「日本のヴィッツにあるきれいな薄紫をイタリアで乗り回せたら、さぞ目立って楽しいだろうに」などと思う。だが、多くのイタリア人ドライバーからすると「明るい色は高級感がない」のだそうだ。

■イタリア車遍歴の果てに

 イタリア北部・スイス国境に近いヴィレーゼ在住のカルメロ(65歳)&ロージィ(57歳)夫妻も、ヴィッツ・オーナーである。

 もともとカルメロさんは地元の高校教師だったが、定年退職を機に3年前、B&B(ベッド&ブレックファスト)を妻のロージィさんと開業した。2つある客室は、もと息子と娘の部屋である。

 ボクは子供の頃観たアニメが頭から離れず、取材中ずっと「カリメロ」と思い込んで呼んでいたにもかかわらず、温厚なカルメロさんは黙って聞き流してくれていたようだ。カルメロさんの出身は南部シチリア島だが、クルマ人生はミラノでの大学生時代から始まる。

 「まずはフィアット500を3台乗りつぶしました」

 この時代のイタリア人の典型的車歴といってよい。以後128、131ミラフィオーリ、132ディーゼル、アルファ33と、こんどはフィアット顧客の典型的ステップアップを辿る。

 しかしフィアット・チンクエチェント(1991年に投入されたポーランド製コンパクトカー)に、本人いわく「車格ダウン」した。子供たちが成長し、家族全員で出かけることがなくなったイタリア家庭で、これもよくあることである。

 そして、ついに初代ヤリスに至る。奥さんのロージィさんは振り返る。

 「当時、街で走っているのを見て、今までにない新鮮なスタイルだなあと思ったのよ」

 そうこうしているうち、知り合いや友人がヤリスを手に入れたので、夫妻も購入してみることにした。

 一家にとって初めての輸入車、それも日本ブランド車だった。「ところが、とにかく壊れ知らず。オイル消費が極めて少ないのにびっくりしましたよ」とカルメロさんは振り返る。

 ロージィさんとしては、収納がたくさんあるのも気に入ったという。「こういうの、イタ車にはなかったもの」

■2600キロの旅にも

 しかし夫妻がボクに驚きを連発してくれたのは、そこからだった。

 「ヤリスで帰省もしますよ」

 えっ帰省って、シチリアでしょう?

 「そう。半島最南端のレッジョ・カラブリアまで行って、そこからフェリーに乗るんです」

 たしかに1960年代、貧しい南部から工業・商業の発展目覚しい北部へと移り住んだ多くの人々は、そうやって帰省したという。事実、その頃の里帰りは、今もミドルエイジ以上の人の間の典型的昔話である。

 しかしそれを今もやっているとは。カルメロさんにとっては若い頃からの年中行事であり、高速道路が整備されたとはいえ、ヴィレーゼからだと片道1300キロもある。東京からの距離に置き換えると、北海道の日本最北端を越えてしまう。往復だと2600キロ以上の旅だ。

 まさにヤリスが快適ゆえであろう。

 次なる驚きは実は夫妻が今乗っているヤリスは、もはや2台めということだった。

 「1台めは、学生をしている息子に譲りました」

 とことん気に入ったので、もう1台同じ初代を購入したのだという。

 さらなる驚きは、息子さんに譲ったヤリスには「フックも装着してある」とのことだ。「今でも大きな物を運ぶときは、トレーラーを繋いで引っ張りますよ」

 イタリアでヤリスはこんなに愛着を抱かれ、徹底的に使われている。

 日本にいるヴィッツ君も、奥さんの運転で郊外の私鉄駅までお父さんを送迎しながら、実は欧州のグランドツーリングに思いを馳せているのかもしれない。

プロフィール

大矢アキオ Akio Lorenzo OYA
 歌うようにイタリアを語り、イタリアのクルマを熱く伝えるコラムニスト。1966年、東京生まれ、国立音大卒(バイオリン専攻)。二玄社「SUPER CAR GRAPHIC」編集記者を経て、96年独立、トスカーナに渡る。自動車雑誌やWebサイトのほか、テレビ・ラジオで活躍中。
 主な著書に『イタリア式クルマ生活術』『カンティーナを巡る冒険旅行』、訳書に『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(いずれも光人社)。最新刊は、『Hotするイタリア―イタリアでは30万円で別荘が持てるって?』(二玄社)。


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