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気付け薬はフラット4

2008年7月4日

  • 筆者 大矢アキオ

写真我が家の掛かり付け医、カルロ医師写真アルファ33 (Fiat提供)写真眼科のファブリツィオ医師と夫人。浴衣は筆者が着せたもの写真病院勤務医のファビオと、自慢のシビック用ガレージ写真欧州仕様シビック・タイプR (Honda Motor Europe (South)提供)

■掛かり付け医

 イタリアには、「掛かり付け医」の制度がある。

 住民となったら保健所に行き、窓口にあるリストの中から、お医者さんを自分で選択する。大抵の人は近所に診療所をもつ先生を選ぶ。

 掛かりつけ医による診察は無料である。さらに医師が書いた処方箋を薬局に持ってゆくと、すべてではないがかなりの多くの薬が無料となる。そのうえ往診も時間の許す限り対応してくれる。

 ただし、大抵の診療所は医師ひとりで、看護士や助手はいない。レントゲンをはじめとする設備もない。したがって自らの分野以外は、即座に他の医師を紹介されることが多い。緊急の場合は自ら、もしくは救急車を呼んで病院に行ったほうがよい。また、日本人としては「駅前に新しいお医者さんが開業したから、そっちに行ってみるか」といった選択ができないのも不便に感じる。

 このように、長短があるイタリアの医療制度の解説はこのくらいにしよう。

 我が家の掛かり付け医は、カルロ先生という医師である。市内4カ所にある診療所を巡回する足は、シルバーの先代フォルクスワーゲン・ジェッタだ。

 カルロ先生、それ以前はずっと赤いアルファ33の後期型に乗っていた。往年のアルファ・ロメオにおけるベースモデルで、最後は赤い色が太陽で退色してしまっていた。しかし具合が悪くて家で寝ているとき、フラット4の軽やかなエンジン音が家に近づいてくると、それだけで元気づけられたものだ。

■意外に堅実

 今回は「イタリアのお医者さんは、どんなクルマに乗っているか?」というお話である。

 知り合いの眼科医ファブリツィオは、数カ所の診療所と大学病院をまわるのに、長いことホンダ・アコードの姉妹車であるローバー600に乗っていたが、長男誕生の少しあとに、よりラゲッジスペースの広いプジョー407SW(ステーションワゴン)に乗り換えた。

 近郊の温泉療養所の常駐医師であるアルベルト氏も、オペルの7人乗り多目的車ザフィーラである。日本でも少し前にスバルから「トラヴィック」の名前で売られた、あのモデルだ。理由は夫人と子供3人、さらに姑が一緒に乗れるからである。

 「買うのはディーラーだが、あとの整備は知り合いの修理工場に頼んで節約するよ」と彼は明かしてくれた。

 いっぽうボクの知人で病院勤務医ファビオの選択は、なかなか大胆である。2006年、それまで2台乗り継いだアウディ80から、ホンダ7代目シビック3ドアに買い換えたのである。最近流行りのクルマのダウンサイジングを、ひと足先に実践したわけである。

 エンジンは欧州仕様の1.7リッター100馬力ターボディーゼルだ。「いままでディーゼル車を所有したことはなかったけど、こんなに燃費がいいとは」と驚いている。

 彼の住む町の近郊から病院のある町までは列車はあるが、夜勤の多い彼には当てにならない。何よりその鉄道は、乗降客が少ないことを理由に学校の休み期間は運休になってしまう。したがって1日往復86キロの通勤はクルマでするしかない。

 イタリアでは医師であろうと、通勤手当は存在しない。したがって燃費がよければよいほどいいというわけだ。

 彼が7代目シビックを購入したのは、現行の8代目シビックがイタリアで発売された2006年のことだった。モデル末期は完成度が高く、そのうえ安くなると信じていた彼は、そのタイミングを狙った。

■自分で「診察」したい!

 もちろん、イタリアでも医師の社会的地位や所得は、一般よりも高い。しかし、この国のお医者さんの多くは、かなり真面目なクルマ選びをしているといってよい。そればかりか、倹約こそが賢者の知恵といったムードが漂う。

 ファビオ先生は大満足のシビックのため、少し前にガレージまで改装した。次はぜひちょっと冒険をして、日本未導入の現行型3ドアで、それも過激なタイプRあたりをお買い上げになってほしいものである。

シビックの唯一の不満は、「あらゆる部分が高度になっていてブラックボックス的。自分でいじれる部分が少ないこと」という。

 あくまでも自分で「診察」できるクルマがよろしいようで。

プロフィール

大矢アキオ

歌うようにイタリアを語り、イタリアのクルマを熱く伝えるコラムニスト。1966年、東京生まれ、国立音大卒(バイオリン専攻)。二玄社「SUPER CAR GRAPHIC」編集記者を経て、96年独立、トスカーナに渡る。自動車雑誌やWebサイトのほか、テレビ・ラジオで活躍中。

 主な著書に『イタリア式クルマ生活術』『カンティーナを巡る冒険旅行』、訳書に『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(いずれも光人社)。最新刊は、『Hotするイタリア―イタリアでは30万円で別荘が持てるって?』(二玄社)。

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