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2012年10月18日
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F1GPとカメラマン 関係の変化に思いめぐらせた週末

写真:CANON EF500 f4.0L IS II USM + 1DMK4 SP:1/80 F:4.0 (絞り優先 -0.7補正)拡大CANON EF500 f4.0L IS II USM + 1DMK4 SP:1/80 F:4.0 (絞り優先 -0.7補正)

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写真:CANON EF14 f2.8L II USM + 1DMK4 SP:1/160 F:13.0 (絞り優先 -0.3補正)
拡大CANON EF14 f2.8L II USM + 1DMK4 SP:1/160 F:13.0 (絞り優先 -0.3補正)

 前回書いたが、先週末はインターナショナルなレースイベントが3つ同時に開催された。韓国でF1、日本でMoto GP(オートバイ世界選手権)、WEC(世界耐久選手権)と重なって開催されるのは、何とも勿体ないような気がするのだが……モータースポーツを中心に撮影している僕だが、今週は全てのレースイベントの撮影を敢えてしなかった。

 それはここの所感じていたことがあり、自分の中でそれを再確認し、ハッキリと確かめたかったからだ。

 他のモータースポーツでは判断しかねるが、ことF1グランプリに関しては僕が初めて撮影した1987年当時と比べるとその環境にはかなりの変化があり、今はカメラマンとチームやドライバーとの間に大きな隔たりができてしまったように感じる。僕の初めてのグランプリの撮影はブラジルのリオだったが、当時はピットの前に仕切りなんて無粋なものは無く、カメラマンはピットの中へ自由に入って撮影をしていた。もちろんそこには阿吽の呼吸があったことは言うまでもないのだが、「今ならば」というタイミングでカメラマンとメカニック、そしてドライバーが理解し合ってマシンの脇で撮影するなんてこともごく普通のことだった。

 いつからだろう、気がつけばピットはパーティションで仕切られて、中は見えなくなり、またピット前にはバリアが張られ、ピットに入れるのはチームがオーソライズしたチーム専属の契約カメラマンだけとなってしまった。

 もちろんそうなった理由はカメラマン側にも大いに問題があったと思う。

 例えばタイミングを計って一人のカメラマンがピットの中で撮影したとしても、それを見た他のカメラマンが我も我もと押しかけ、それが10人にも及べば、時としてチームは作業に支障を来すし、ドライバーも集中できなくなることもある。特に上位のチームほどカメラマンが集中する傾向にあり、規制せざるを得なくなったという経緯もあるのかもしれない。もちろんそれ以外にもいわゆる企業秘密もある訳で、開発中のニューパーツやシステムを撮られてはたまらんという事情もあるのだろう。

 いずれにせよどちらが先という話ではないのだが、F1グランプリが近代化するにつれてチームの「秘密」が増え、カウルを開けたマシンを撮られるのは困るという事情があるのだ。そしてまたそれを狙ってスクープ写真的なものを撮るカメラマンが存在することも事実で、チームによってはターゲットと認識したカメラマンが来ると専任のメカニックがレンズの前に立ち、そのカメラマンの動きに合わせて、まるでバスケットボールのマン・ツー・マン・ディフェンスのようなシフトをしいて彼のレンズの前に立ちはだかる。

 メカニカル写真は僕には全く興味の無いカテゴリーなので、人ごとのようにそんな様子を眺めては苦笑しているのだが、実際問題としてこれはどうなのだろうか。

 そして結局のところチームに不利益をもたらす可能性のあるカメラマンは排除されピットには入れないという環境が作り出された。

 ではチームと契約をしていないカメラマンはどうするかといえば、皆がバリアの前で一様に望遠レンズを構え、わずかなチャンスを狙ってしのぎを削っているのが現状である。しかもチームによっては(なぜか多くの場合上位チームなのだが)ドライバーが乗り込むや否やモニターをコックピットの前に置く。極端なチームは(MCとかFとかだが…) ドライバーが乗り込む前からモニターはコックピットの前に置いてあり、乗り込んだドライバーの表情は一切撮影することができなくなっている。スタート直前でモニターがどけられても間髪入れずにドライバーはバイザーを下げて自らの表情を見えなくしてピットを後にする。

 もしかしたらフラッシュが眩しいとか煩わしいとか、なにか理由があるのだろう。だがそれならばそう言ってくれればいい、「今は止めてくれ」と。そしてストロボを使用禁止にすればいいではないか?

 以前はピットに入れたチームのメカニックが「ごめんね、チームから禁止命令が出たんだよ…僕は君の写真を良く知っているし、全く問題ないと思っているんだけど、チームから契約カメラマン以外はダメだと言われるとどうしようもないんだよね」と申し訳なさそうに謝ってきた。「いいんだよ、仕方ないさ、カメラマンにも問題があるのだからね」

 こうなるとカメラマンであるかどうかよりも、それ以前の人としてのマナーや人としての行動が問題になっているのだ。よくテレビで見るパパラッチがハリウッドスターを追いかける様子があるのだが、アレは見ていて居たたまれない。周囲の迷惑を考えもせずに、我先にと前に進みストロボの嵐を浴びせかける。アレは暴力ではないか?そしてそんなにしてまでスクープを撮りたいのだろうか…残念なことにレース界のカメラマンの中にもそんな輩は少なくないのが現実だ。彼らと同胞であることが恥ずかしいのだが、広角でローアングルから不躾にフラッシュを焚いて追いかける日本人カメラマンはシューマッハから「もう充分に撮っただろう!」と怒りまじりの言葉で怒鳴られたり、チームから徹底的にマークされている日本人カメラマンもいる。さらにドライバーから突き飛ばされたフランス人カメラマンさえもいる。

 結局の所、自分さえ良ければという彼らの自分勝手な行動が全く関係のないフォトグラファーまで道連れにしたということに、そんな彼らが気づくはずもなく、何とかの一つ覚えのようにワイドレンズにストロボを付け、今日もドライバーの足下をうろついていたり、盗撮者のような目線でピットガレージで作業中のマシンの秘密を狙っているのだ。

 もちろん需要と供給の関係があるのは解る。

 だがフォトグラファーとして「撮られたくない被写体」を撮影することほどつまらないことはない。

 そんなレースカメラマン達の行き過ぎた行動に嫌気がさしていた僕は、先週の3つのインターナショナルイベントを敢えて撮影せずに、空いた休日に知人の結婚式の撮影をすることにした。久しぶりのウェディングの撮影だったが、そこには喜びが満ちあふれていた。撮る喜びと撮られる喜びが完全に一致していたからだ。

 期待されてそれに応えて撮る写真。久しぶりに自らの想像力を働かせ思うような撮影ができた。それと同時にピットの前で望遠レンズを構え、皆と同じような写真を狙っている自分の姿がなぜか空しく思えてきた……。

 結局の所、僕は「人間」に興味があるわけで、機械にはさして興味がない。だからグランプリに行っても最近は人ばかりを狙っている。格好の良い走りの写真よりも集中していて危ないほどのドライバーの目や、フェイスマスクをかぶり、グローブをする姿。ドライバーの緊張した表情は素晴らしいし、メカニックの油だらけの指先も訴えてくるものがある。さらに観客席に目を向ければそこには素晴らしいファン達の姿がある……そんな「人間」が好きだから、だから僕はどんなに嫌なことがあっても、自分の好きなそんな人たちを撮り続けたいからグランプリを追うこと止められないのかもしれない。

by F1SCENE

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プロフィール

写真

宮田 正和 Masakazu MIYATA

 1957年東京浅草生まれ。1987年、ブラジルグランプリでF1を初撮影。マシンの持つ美しさ、人間模様にひかれ、1988年より、F1グランプリなどモータースポーツをメインテーマとして活動を続ける。
 2004年、記事主体の既存F1誌に満足できず、最高の写真を見せたいと、グラフィック誌F1SCENEを創刊。編集拠点をF1の本拠地ヨーロッパに移し、ヨーロッパの文化と日本の感性の融合を合い言葉に「Team ZERO」を率いて「出版の壁」に挑む。

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