2012年のF1グランプリの最終戦、ブラジルGPが終了した。決勝レースは悪天候の予想がされていた。もちろん天気というレースが荒れる要素も大きかったが、スタート直後にベッテルがスピンをしてコースのど真ん中で後ろを向いている姿には正直に驚きを隠せなかった。そしてこの瞬間ベッテルのワールドチャンピオンは無いと思った。
だが時として現実はドラマよりも劇的であり、残酷でもある。最終的にはレッドブルのS・ベッテルが3ポイント差という僅差で、3年連続のワールドチャンピオンに輝いた。序盤から大波乱のレースはある意味においては見応えはあったが、その波乱を起こし真っ先にリタイアしたドライバー達の顔ぶれを見ると、毎度というか今や常連のようなメンバーというのはどうだろうか?
B・セナ、R・グロージャン、S・ペレス、(これにP・マルドナードが加われば完璧なGP2ロケット弾カルテットだったのだが…)GP2上がりのドライバーには今シーズン何度も掻き回されているのだが、この局面でタイトル争いに全く関係のない彼らが絡んでくるとは、なんともはやというしかない。
もちろん結果的にレース展開は面白くなったけど、やはり荒れたレースになってしまい、レース本来の緊張感を味わい、痺れるようなタイトル争いを見たかった僕には残念でもあった。(もちろん違った意味で緊張感や醍醐味はあったけど)過去に何度も言ってるように、レースとは速ければ勝てるというものではなく、速さ+マネージメントが必要で、自分たちが勝手にリタイアするのは構わないが、凌ぎを削ってシリーズ戦を戦っている他のメンバーのことも考えて欲しい。
それにしてもこの3人が揃ってリタイアをしてコースサイドを歩く姿は今シーズンを象徴しているようでもあり、個人的には思わず失笑した光景でもあった。来季はもう少しまともにレースをして、並んで表彰台に登るぐらいになって欲しいものだ。
そして来季と言えば既に既報の通り、小林可夢偉のザウバー残留は無くなった。さらにドライバーの確定していないチームも残り少なくなってきた。今年以上の活躍を期待するのであればロータスかフォースインディアだろう。だがどちらも有力候補が存在するので微妙な状況だ。そんな中、小林可夢偉自身が活動資金の援助を広く一般に願いでるために「kamui-support.com」を立ち上げた。既に8200万円を超える金額が集まっているという。しかしドライバーが自ら活動資金を集める為に広く一般に募金活動をするというのは前代未聞だし、こんな状況を見るにつけ日本のスポンサー、特に自動車メーカーには本当にガッカリさせられる。業績、収益、もちろん株主に対するイメージや責任はあるのだろうが、自分たちが関わっていたF1グランプリという世界の舞台で、ただ一人の日本人ドライバーがもがき苦しんでいるのをどんな思いで見ているのだろうか?
アジア圏のドライバーがヨーロッパの文化の象徴でもあるF1で戦っていく厳しさは言葉では言い尽くせない。自らがステージは違うが「出版」という世界でヨーロッパに飛び込み挑んできた僕も人種の壁や文化の違いをイヤというほど見せつけられ、感じさせられてきた。だから人一倍そんな小林可夢偉の思いを叶えさせてあげたいと願うのだ。
今シーズンのF1グランプリは終ったが、来季へむけて既に各チームは始動を開始している。シート争いをしているドライバーに残された時間は少ない、だがきっと来季も F1グランプリに日本人ドライバーが参戦していると僕は勝手に思っている。根拠なんてハッキリしたものがあるわけじゃない、ただ同じ日本人として日本を信じ期待しているからだ。絶対にF1を唯のブームで終らせてなるものか!そんな強い思いが僕の中に沸いてきた…

1957年東京浅草生まれ。1987年、ブラジルグランプリでF1を初撮影。マシンの持つ美しさ、人間模様にひかれ、1988年より、F1グランプリなどモータースポーツをメインテーマとして活動を続ける。
2004年、記事主体の既存F1誌に満足できず、最高の写真を見せたいと、グラフィック誌F1SCENEを創刊。編集拠点をF1の本拠地ヨーロッパに移し、ヨーロッパの文化と日本の感性の融合を合い言葉に「Team ZERO」を率いて「出版の壁」に挑む。