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| 加藤久美子さん |
肉親の介護に携わった自身の経験から、今回、出展された福祉車両をチェックしてみた。私自身、福祉車両は前回(2年前)のモーターショーでは身近な存在ではなかった。しかしその後、父の末期がんが発覚し、介護が必要な生活を経験。さらに、以前から膝の調子がよくなかった母も、長時間の自力歩行が困難になったので移動に車椅子を使うことが多くなった。福祉車両や、介護支援機能を持つ車は突然に、私にとっても身近なものになった。
●実際の介護経験から
その経験からすると、いろいろと改善した方がいい点が浮かんで来た。
1.車椅子のまま乗車できるのは確かに介護する家族や、介護施設のスタッフにとっては便利ではあるが、本人にとってはかなり苦痛である。たとえ短時間でもこれは大変。病院や介護施設などで使う「汎用」の車椅子はサスペンション付のものはほとんど存在しない。
2.長時間の移動の場合、車椅子から降ろして車のシートに座らせることが一般的だが、その場合、虚弱な高齢者は、シートベルトの着用すら困難。かといって着用しないことはさらに危険なことは明白である。骨の弱っている高齢者は、ちょっとの衝撃でも骨折することがある。 また、着用はできても、3点式、もしくは2点式のシートベルトでは姿勢を保持することができない。小柄な高齢者ではなおさらである。
3.日常的な移動では車椅子までは必要ない。車の乗降の際や、車内での移動といったシーンで時間がかかる、動きが困難な高齢者の存在も忘れてはならない。
これらのことを父の介護や、その周辺のスタッフ、また別の介護が必要な高齢者や家族の話を聞いて感じていた。日本は1970年に総人口に占める65歳以上の高齢者の人口の割合が7%を超え、94年には14%を超えた経緯を持つ、世界でも類のないほどのスピードで人口の高齢化が進んでいる。さらに介護の必要性が高まる75歳以上の「後期高齢者」は過去30年間で約10%も増加している。自宅介護でも施設での介護でも、それらのサービスに、車は欠かせない存在なのである。
●注目の車両をチェック!
このような現状をふまえて、今回の出展車を見てみた。障害者が自分で運転するための車や、障害者同士のカップル向けの車など、障害者の社会参加や自立を支援するための車が圧倒的に多かったものの、介護、虚弱高齢者、介護する側の家族やスタッフに目を向けた車両や装備も出展されていた。中には、世界初の発表となる出展物もあり、海外の報道関係者からも注目を集めていた。
では、具体的に車両を紹介してみよう。
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| トヨタ ポルテ サイドアクセス車 |
(1)トヨタ ポルテ サイドアクセス車 (市販車 出品者 トヨタ自動車)
大きなドア開口部と低い床がうりのトヨタ・ポルテならではの装備を備える。
日本で初めて、車椅子のまま助手席への乗車を可能にした。車のシートがそのまま車椅子になるというもので、乗換えをせずに気軽に外出ができる。車椅子に乗ったまま車内に乗り込むことができる車は多々あるが、画期的なことは、このポルテの場合、車のシートがそのまま車椅子なのである。つまり、車内移動中の乗り心地、すわり心地も、通常の車椅子とは格段の差がある。リクライニングや前後スライドが通常の車のシートのように電動で可能だ。車から出て、車椅子の状態になってからの移動は、基本的に介添え者が必要だが、電動ユニットをオプションで装着すれば、自力操作も楽にできる。一般家庭向けの介護用車としては、ベストな1台といえる。介護される高齢者と、介護する家族のことが非常によく考えられている。
(2)トヨタ ヴィッツ自立型福祉車両 (出展者 トヨタ車体)
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| トヨタ ヴィッツ自立型福祉車両 |
こちらは高齢者向けというわけではないが、車椅子に乗ったまま運転でき、リモコン式自動車乗り込み機構により、運転席、助手席ともに1人で乗り降りが可能。車椅子の収納スペースが不要なので、乗車定員どおりの人数乗車ができる。
(3)タント フロアリフト (参考出品 世界初登場 出品者 ダイハツ自動車)
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| タント フロアリフト |
これはすごい!電動昇降のフロアリフトを採用しており、フロアごと地面の高さまで下りてくるのである。車椅子ごと乗り込める車は多々あるが、それらは折りたたみ式のスロープを車外というか地面に広げて、車椅子を出し入れする仕組みになっている。傾斜にはどこも気を配っていて、ゆるい角度にしているものの、ほんのわずかな傾斜でも人が座った車椅子を車内に出し入れするには、結構なエネルギーが必要である。しかし、このフロアリフトでは、車の後部床部分がそのまま昇降するため、スロープを広げる必要もなく、スペースがわずかで済む。水平に昇降するため揺れが少ない。介護する側、される側の負担を最小限にしているのだ。手すりやヒーター、カップホルダー等も装備され、快適性も十分。また、タントは軽自動車である。取りまわしが容易なコンパクトなボディサイズはもちろん、維持費などの経済的な部分でも卓越したメリットがある。介護にはお金がかかる。この先、65歳の息子が90歳の母を介護するという、いわゆる老老介護がますます進む社会情勢になることも予想されている。経済的負担は少ないほうが良いに決まっている。
(4)ホンダ アルマス コンセプト (参考出品 世界初登場 出品者→本田技研工業)
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| ホンダ アルマス コンセプト |
アルマスとは、トヨタのウェルキャブ、日産のライフケアビークルのように、ホンダの福祉車両シリーズの総称である。この車は介護支援車のみならず、車椅子のユーザーが自分自身で運転を楽しむことを第一に考えられたコンセプトカーである。また、本人だけではなく、家族や友人を乗せてドライブできることを目指している点が特徴的だ。ベース車両は見てわかるとおり、ホンダの最新にして最高級のミニバンである、エリシオン。最も注目すべきは、運転席ドアの開閉方式である、観光バスのような車体外側に開く、平行スイング式と呼ばれるもので、この方式を採用したことで、開口面積が大幅に広がっている。
リモコン操作で運転席ドアとその後ろのスライドドアを開けると、フロントドアから運転席が、スライドドアから車椅子の収納機構が車外にスライドしてくる。ドライバーは運転席に座ったままで、車椅子をたたんで収納ロッドにセットした後、リモコン操作で運転席は所定の位置に、車椅子は格納場所に移動するという仕掛けだ。
(5)レカロ
生誕からおよそ100年、レカロはスポーツシートとして有名であるが、腰痛防止を目的としたメディカルシートでもおなじみ。今回のモーターショーでは、ドイツAGR(ドイツ脊椎健康推進協会)理念を基本としてハンディキャップを持つ人や、高齢者の方々の生活環境を考えた、社会的要求を捉えた製品として現在開発中の「レカロウェルネスシリーズ」が参考出品されている。世界初出展となっているのは、
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| レカロ ベルト付腰痛予防シート「RECAROWELLNESS LX」 |
1.自走用運転席「RECARO ORTHOPAD-CE」
座面の一部がドア側に約20センチ電動でスライドする他、電動リクライナーを装備している。大幹保持ベルト(10段階の高さ調整が可能)の装備もオプション機能として可能。
2.電動車椅子「EMC-230 RECARO LX-CE」
電動車椅子に、上記の1番のシートを組み合わせたもの。快適な体幹保持と場所間移動(ベッドや車などへの移動)が可能。
3.ベルト付腰痛予防シート「RECAROWELLNESS LX」(写真35)
プロドライバー用に開発されたシートだが、高齢者の安全な移動にも効果的だと思う。10段階の高さ調節が可能な腰部保護ベルトを備え、腰部分をしっかりシートに固定する。
●メーカーに望むこと
ここまで取り上げたきた以外にも、すべての乗用車メーカーで自社の車をベースにした福祉車両を出展している。しかし、ベースとなる車両が新しい程度で機構的に新しいものはあまりない。やはり、業績の良い、体力のある会社でないと、画期的な新型福祉車両を開発するまでには至らないのだろうか?
たとえばトヨタ自動車は福祉車両の歴史も30年以上になる。それぞれの障害や介護の度合いに応じて車両の種類や機能も豊富である。
トヨタに関しては「後付け」のパーツへの対応も特筆すべき部分がある。たとえば、今、すでに標準のトヨタ車に乗っていて、助手席だけ回転機構付のものや、電動リフトアップするものに変えたい、という場合。もちろん、最初からその仕様になっているものに比べコストは2倍近く掛かるのだが、それでもメーカーとしてそのようなユーザーからの要求に対応しているし、さらに、ボルトオンでの装着になるため、改造申請が不要と言うアドバンテージも有している。ちなみに、これは他の自動車メーカーでは不可能。
福祉車両を作る主な自動車メーカーにそれぞれ尋ねたが、日産、三菱などシートの後付けなどに関して、改造申請をして対応しているのはまだいいほうで、まったく対応していないメーカーも数社あった。福祉車両として丸ごと購入するには、経済的負担も大きい。部分的なアシスト機構が、(車両を1台購入するよりはかなり安く)、後付で、気軽に装着できることは大きなメリットだと思う。
さらに言えば、虚弱高齢者向けのちょっとしたアシスト装備がもっと増えてもいいのではないかと思う。
たとえばシートやシートベルト。小柄で虚弱な高齢者を安全に快適に後部座席で移動させるには、現在の標準シートやシートベルトでは、不満足である。チャイルドシートのような、シルバーシート?的なものがあってもいいと思う。介護施設や、老人病院のスタッフにとっても望むべき装備ではないだろうか。介護サービス業者の車はたいていが商用車のワンボックスである。商用車のワンボックスの後席は、乗ったことある人ならわかるだろうが、薄いベンチシートである場合が多く、実に乗り心地が悪い。シートベルトもきちんと締められない状態で、姿勢を保持するのも大変なお年寄りがあの席に、ぎゅうぎゅう詰めになって座っている姿は、なんとも気の毒だ。
ちなみに、飛行機においては全日空が小柄で虚弱な高齢者や、子供向けに、着席補助シートというのを無料で貸し出ししている。体のサイズにあわせて2種類が用意される。このような着席補助シートが、一般家庭の自家用車の後部座席にかんたんに取り付けられたら、介護する側、される側、みんなが安心できるのではないかと思う。現在、すでに市販されているのはシートの背もたれ部分にぐるっとまわして、マジックテープで止めて、胸部をシートに固定する「胸部固定ベルト」というものがある。これでもかなり安定感は増すのだが、シート形状がホールド性とは無縁ともいえるベンチシートでは、それすらも装着が困難かもしれない。レカロが参考出品しているような大幹保持ベルトがベンチシートにも装着できれば、介護される側のお年寄りにとっても、安心感抜群である。
ますます浸透してゆく高齢者社会。そこに車という移動手段は、もはや欠かせない存在である。たとえば、20代で車椅子生活を余儀なくされた身体障害者に比べたら、介護されるお年よりや、虚弱な高齢者が車を必要とする年数は短いかもしれない。しかし、それぞれの期間は短くても、人数は今後ますます増えるわけで、高齢者が快適で安全に移動できる装備や福祉車両は、もっともっと種類を増やし、誰もが利用しやすい機能や価格を実現して行ってほしいと思う。
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