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| エド村崎のフィルム・マニアーク November
26, 2004 |
クレージーだよ 奇想天外
1966年・東宝作品
監督=坪島孝、出演=ハナ肇とクレージーキャッツ、藤田まこと、星由里子、内田裕也、レンタルビデオのみ |
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エド村崎
96年末から98年春にかけて、アエラ巻末の「in short……」欄に映画評コラム16本を執筆しただけで、この世から姿を消した幻の映画ライター、一説には本業は新聞記者だが、その、よこしまなドッペルゲンガーとなって、ひとりよがりの極致のような原稿を書いている。
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|バックナンバー|
松尾慈子の漫画偏愛主義
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こんにちは、AICのプロテクト外ライター、ほぼ確実なエド村崎です。
どーでもいいっちゃ、どーでもいい俺ん家の話で恐縮なのだ。でも、読むのだ。
関西文化圏の周縁の地からはるばるやって来た家人がいるため、日々の生活のモードとしては基本的にギャグ仕様というのか、ボケるタイミングは見逃さず、さらにボケられたら、すかさず心尽くしの突っ込みを返してあげないと、優勝請負人として超高額年俸でFA移籍しながら得点圏打率激低のパワーヒッターでもあるかのような汚名をかぶせられることになるわけなのだ、これが。
例えば、である。「まあ、あなた落ち着いて」などと言われた場合、唇の端を微かに曲げてほくそ笑みながら、とっさに両手の人差し指の先端で己の両乳首をツンツンツンツン、ツンツンツンツン突っつかなければ、ストライクゾーンど真ん中を通過する軌道のまま落ちきらなかったフォークボールを見送ってしまうのに等しい失態となってしまう。
ツンツンツン「あなた、なにしてるの?」ツンツンツン「だって、お乳(ちち)、突けって言ったから」ツンツンツン「落ち着けやがな!」という吉本新喜劇的展開になれば、2打点ぐらい稼いだことになる。
日々是「困った、困った、こまどり姉妹」(by島木譲二)であったり「わりーね、わりーね、ワリーネ・デートリッヒ」(by伊東四朗)であったりするわけだが、最近、「マイブームからアワブームへ、増量キャンペーン」の対象となっているのが、怒涛のハイテンション芸人、猫ひろしである。
パンツ一丁で舞台をあるときは走り、あるときは仁王立ちで微動だにせず、やおら「うるせー!」と観客を面罵したかと思うと手拍子を無理強いし、意味不明のフレーズを意味もなく連呼する猫ひろしは、もうホントお願いします、勘弁してつかーさいっ! とひれ伏さざるを得ない「ギャグ100連発」マシーンなのである。ポーツマス! ポーツマス!
その脳内永久機関と化したギャグ・イリュージョンは、私の力量ではもはや表現不可能である。まずはHPを見ていただいて、来年1月14、15日の単独ライブへ行っていただかなくてはならない。
てなわけで、緊張と緩和どころではない、果てしのないハイパーハイテンションがギャグを成立させる状況に対峙しつつ、つらつら思うのは永遠不滅、史上最強のギャグはなにか? ということである。そしてその思索は、どー煮詰めても、クレージーキャッツの谷啓の「ガチョーン」にたどり着かざるを得ないのである。ビローン。
「ガッ」とつかんで「チョン」と引く、だからこそのガチョーンである。呼吸をため、裂帛の気合とともに、万物をつかみ寄せるのが正道とされるガチョーン。麻雀で牌をつもる動作から思いつかれたと伝えられるガチョーンは、掌で虚空をつかんだ瞬間に真空を生じさせ、それをガチョーンと引き抜くと、空間のバランスが一挙に崩壊し、ハラホロヒレハラな不安定状態を現出させる。
いったん引いた手を、また出したり、引っ込めたりするのは邪道で、達人のガチョーンは海をも割るという。人の顔の前でガチョーンすることなど、もってのほかである。
しかしこのガチョーンは、あくまでもコントの決定的な落ちにしか使えないテレビ芸のギャグであって、東宝クレージー映画では、ビローンとともに、お目にかかる機会は稀であった。つまり、その場の状況に、なだれ的に不安定性を出現させるガチョーンは、ギャグとしてのインパクトがあまりにも凄まじいがために、ある意味、空間にブラックホールを誕生させるのに匹敵する効果がある。ハラホロヒレハラなハレーションを起こしてスクリーンは歪み、時間軸は交錯し、ドラマは破綻してしまうかも知れないのだ。
『クレージーだよ 奇想天外』は、全30作の東宝クレージー映画のなかで、じつは初めてにして唯一、谷啓が主演を務めた意欲作なのである。
SF仕立てのコメディで、谷啓が演じるのは遊星αから地球に派遣されたエイリアンのM7(ミステイクセブン)。原水爆実験や宇宙ロケットの打ち上げに明け暮れる地球人類の所業に恐怖した遊星αの長官(植木等)の命令で地球に平和をもたらす任務を課せられたM7は、化学メーカーの大企業の新入社員と入れ代わり、超能力で自社製の弾薬を花火に変えてしまいクビになる。超能力も奪われてしまったM7はひょんなきっかけで超人気歌手になり、さらに国会議員へ転進。日本の核武装を可能にする法案の成立に反対したために殺し屋に追われる身になる……という物語。
記憶があやふやなのだが、たしかガチョーンは封印されていたはず。しかし腰だめで銃を構えるかのように、掌が虚空をつかみかけた右腕を前後に揺すりかける前ガチョーン的な仕草が随所にあって、そのたびに空間の位相が動揺する。約40年のタイムラグで、いまとなっては笑える要素は乏しいのだが、谷啓の存在感は、植木等とはまた違うテーストで、圧巻なのである。
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