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アサヒ・インターネット・キャスター



エド村崎のフィルム・マニアーク December  24, 2004
牛乳屋フランキー
1956年・日活作品  監督=中平康、出演=フランキー堺、市村俊幸、小沢昭一、宍戸錠、レンタルビデオのみ
エド村崎
エド村崎
96年末から98年春にかけて、アエラ巻末の「in short……」欄に映画評コラム16本を執筆しただけで、この世から姿を消した幻の映画ライター、一説には本業は新聞記者だが、その、よこしまなドッペルゲンガーとなって、ひとりよがりの極致のような原稿を書いている。
バックナンバー 松尾慈子の漫画偏愛主義


近ごろ、うちのオヤジ殿から「オレオレ、オレだけど……」という不届きな電話が不意にかかってきたのである。

いつの間にか「振り込め詐欺」にネーミングが変わっていた「オレオレ詐欺」の逆バージョンを狙った寒過ぎるブラックジョークだったらしく、70過ぎてから初めて自動車運転免許をオートマ限定で取って、車庫入れサポート機能付きのトヨタのプリウスを転がしていたりするオヤジ殿なので、やっぱりオレオレはまずいだろ、とインモラルでは人後に落ちない息子にたしなめられたわけである。

どうせなら「オレオレ」でなく「ワシワシ」だったらまだ、かわいげがあったかも知れない。「ワシワシ、ワシだけど」……って、変わらないか。

しかしである。「オレオレ詐欺」でさんざん辛酸なめ子さんだった老人たちがリベンジに決起した「ワシワシ詐欺」なら、オレは寛容の権化となってワシを許してしまいそうだ。オレたちに弄ばれ、いたぶられたワシたちが徒党を組み、怨念散華の狼煙をあげる「ワシワシ団」なら、非合法地下組織であってもオレはシンパになってしまいそうだ。

てなわけで、なんだかやたらと一刻も早くジイサマになりたくてウズウズ、うずいて仕方がないのである。まだるっこしいんで20年分ぐらいの時間はすっ飛ばしてもらって、もういきなりジイサマでいいのである。

しかしどんなジイサマでも構わないわけではない。くすんだ色気をふりまきながら、それが嫌味になっていない、粋な好色ジイサマでなければならない。

その理想を体現する先行ジイサマで真っ先に思い浮かぶのは小沢昭一氏であり、次いで故・殿山泰司氏であるだろうか。

「JAMJAM日記」を読むと、夜な夜なフリージャズを聴きまくり、ミステリーを片っ端から読みまくり、ヒヒヒヒッとほくそ笑んでいる殿山ジイサマも大好きなのだが、やっぱり小沢御大をおいて他にないか。中学生のころからTBSラジオの「小沢昭一の小沢昭一的こころ」を聴かせていただいている小沢御大は偉大なる将軍様であり、私はいつでも忠実な喜び組の一員になっても構わない所存なのである。

小沢老には2度ほど仕事がらみで対座させていただいたことがある。間近でその声に耳を傾けていると、懐かしい昭和の色が仄かに見え、忘れかけていた昭和の匂いが微かに香り立つのである。老境の男の、枯れていてなお艶やかな色気に感銘を受けたのは、このときだけである。

150本を越える映画に出演している御大に、もっともお気に入りの作品を挙げてもらおうとしても恐らく言葉を濁してしまうに違いなく、愚問を敢えて発する機会は失してしまったのだが、この「牛乳屋フランキー」では、まだ枯れていない御大がやたら張り切っていて、しかしその、力まかせなそぶりを空回りさせないセンスを存分に発揮しているのも確かめられ、この大好きなジイサマに頬ずりしたくなるのである。

タイトルから一目瞭然だが主演はフランキー堺で、「幕末太陽伝」の前年の作品。フランキー演じる堺六平太は長州・追分からはるばる上京し、親類の牛乳屋で住み込みで働く。この牛乳屋、借金を背負っているうえに商売敵のブルドック牛乳に嫌がらせされて、にっちもさっちも行かなくなっていた。牛乳配達をしながら便利屋稼業も営んで得意先を増やしていく六平太は果たして窮地に立たされた牛乳屋を建て直せるのか、というストーリーのナンセンス喜劇だ。

小沢老は牛乳屋の住み込み店員で、いとも簡単にブルドック牛乳へ寝返ってから、機会があれば、ことごとく六平太の足を引っ張ろうとする姑息な男を演じているのだが、終始一貫、素っ頓狂なほどのハイテンションでフランキー堺に絡んでいくのである。

「幕末太陽伝」の貸本屋の金造役も落語に精通した素養がうかがえる好演だったが、小沢昭一的ハイテンションも捨て難い。「牛乳屋……」の後、フランキー堺とブーチャンこと市村俊幸共演の「ああ軍艦旗」シリーズ2作でも小沢ハイテンションの勢いは衰えず、拝見するたび、大好きなジイサマの言葉巧みな、やんちゃ話に耳傾けているような心持ちにさせてくれるのである。



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