asahi.com
天気  辞書  地図  サイト案内  アクセスTop30 
サイト内検索:
コラム 社 会 スポーツ 経 済 政 治 国 際 サイエンス 文化・芸能 ENGLISH 
  >AIC  >天声人語  >日本@世界  >ポリティカにっぽん 
     
 home >コラム >AIC   


アサヒ・インターネット・キャスター



松尾慈子の漫画偏愛主義 December  26, 2003
のだめカンタービレ
二ノ宮知子  7巻(以下続刊) 講談社 本体390円
松尾慈子の顔写真
松尾慈子
1992年朝日新聞入社、金沢、奈良支局、整理部などを経て、現在、大阪本社学芸部記者。漫画好き歴は四半世紀超。
一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。
バックナンバー エド村崎のフィルム・マニアーク


本の表紙
私はクラシック音楽がとても苦手だ。それは私の4歳上の姉が音大生だったことに起因する。想像してみてほしい。毎日最低3時間は下手なピアノの音が鳴り響いている家を。音大受験準備のため、そして音大入学後には大学の課題のため、姉は5年以上にわたって、ほぼ毎日ピアノを弾き続けた。その結果、同居していた私は、ピアノの音をまったく無視する能力を手に入れた。私は大学入学を機に家を出て以来、クラシックとは袂を分かった、つもりだった。

「のだめカンタービレ」は、音楽大学を舞台にしたラブコメディー。タイトルの意味は、主人公の音大生、野田恵の愛称が「のだめ」で、「カンタービレ」は「歌うように」。生活態度はズボラそのものの野生児・のだめは、ピアノ演奏に関しては天才的。のだめは「俺様体質」の指揮者の卵、千秋に恋をする。その才能ゆえに、千秋は学内のカリスマ的存在なのだが、のだめはそんなこと気にしない。アタックあるのみ。同じく千秋を愛する乙女チックな男子・真澄とも、対等に戦っちゃう。

天然キャラののだめは、そこかしこでギャグをかましてくれる。新しいピアノの先生・江藤教授がハリセンを振るうため、のだめは毎日レッスンを逃げ回っている。それなのに、江藤教授がのだめを捕獲するエサとして廊下に置いたフィギュアのために、のだめはまんまと教室へおびき寄せられてしまう。そんなこんなで、数ページに一度は、のだめは「ぎゃぼー!」などの奇声を発し、読者を笑わせてくれる。それでいて、モーツァルトのオーボエ協奏曲ハ長調を指揮する千秋に、のだめは「モツアルトはピンク色ですヨ〜」とツッコんで、華やかさ・軽やかさを引き出す指揮のヒントを与えたりするのだ。

クラシックとは縁を切ったつもりだった私が、これを読むと、頭の中に軽やかな音楽が流れてくるような錯覚を感じる。のだめがピアノを楽しげに弾く様子を読むと、「私も楽器が演奏できたら楽しいだろうな」とうらやましくなる。特に、連弾などの演奏が会心の出来だったときに、登場人物たちがカタルシスを得たような表情をみせる場面は、心の狭い私はつい、ねたましくなってしまうくらいだ。「演奏で集団が一体になる」っていう快感は、楽器のできない私には一生ありえないからな〜。

音楽家を疎ましいと思うことはあったが、うらやましいと思う日が、私にやってくるなんて! 20年近く私の胸にあった音楽への怨恨を、この漫画は、きれいさっぱり洗い流してしまった。音を出せないメディアが、音楽のすばらしさ・楽しさを伝えるという困難を、この漫画は、まるでのだめが好きな曲をピアノで弾くときのように軽々と飛び越えてしまっている。いや、作者は毎回、苦しんで書いているのかもしれないが。

ところで、作者の二ノ宮知子は、パソコンで漫画を書いてると雑誌のインタビューに答えていた。前世紀からの漫画オタクな私としては、ちょっと画面が白すぎて物足りないような気もしていたが、慣れれば、いっそ快感になってきた。ちなみに、彼女の「天才ファミリー・カンパニー」(幻冬舎コミックス)や「GREEN」(講談社)なども、彼女の優れた現状認識能力と、時代の先を読む先見性を示す秀作でオススメです。



ご意見はこちらへ・・・

Designed by TUBE graphics 


| 社会 | スポーツ | 経済 | 政治 | 国際 | サイエンス | 文化・芸能 | ENGLISH |
GoToHome ニュースの詳細は朝日新聞へどうぞ。購読の申し込みはインターネットでもできます。 GoUpToThisPage
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
| 著作権 | リンク | プライバシー | 広告掲載と注意点 | アサヒ・コムから | 朝日新聞社から | 問い合わせ |
Copyright Asahi Shimbun. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission