| 松尾慈子の漫画偏愛主義 November
05, 2004 |
恋愛映画のように、は
山田睦月×菅野彰
新書館 本体520円 |
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松尾慈子
1992年朝日新聞入社、金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、名古屋本社報道センター記者。漫画好き歴は四半世紀超。
一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。 |
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エド村崎のフィルム・マニアーク
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漫画は、映画でいうなら脚本、演出、監督まで、基本的に漫画家1人がすべてをこなす。だから私は、そうやって、すべてを自分1人でやるのが好きな人が漫画家を目指すものだと思っていた。もちろん、「巨人の星」や「あしたのジョー」、「キャンディキャンディ」など、原作者と作画家がタッグを組んだことで生まれた超傑作も多数ある。むしろ男性漫画は原作つきの名作が多い。しかし、少女漫画の分野では、私の感覚からいって、原作つきの漫画は、絵が硬かったり、コマ割りがうまくなかったりと、演出がイマイチの作品が多いような気がしていた。
本作では小説家・菅野彰が原作、山田睦月が作画を担当した。帯に「夢のコラボレーション!!」とあった表紙を見たとき感じた私の心配は、杞憂に終わった。キャラクターは魂を持ったように動き、自然に物語をつづっていた。
表題作は、薬剤師・康子が主人公。兄妹同然に育ったいとこの健と、ダラダラと家でビデオを見ながら、急に結婚を決めてしまう。ところが周囲は大反対。その理由を聞き、2人は思い出の場所へと旅に出る。2人は反対する周囲への恨み言はほとんど言わない。ただ、別れなくてはいけない運命を受け入れるための旅路だ。記憶を振り返りながらお互いへの愛情と信頼感を再確認し、2人はふんぎりをつける。
周囲を恨まない2人がなんとも好ましい。康子は怒りっぽい男勝りの性格だが、自分のためにではなく、いつも正義や他人のために怒る。それが時々から回りしてしまう。健はその康子の性格をよく理解している。
康子はいう。「人と折り合える強さが 私にはなかったな いつも本当は健の方が強かった」「あたし 他人を愛せない人間なのかもしれない 他人に何も分けられない人間なのかもしれない」。恋愛することが一番幸せ!恋愛できない人間なんてどっか欠けてるんじゃ?みたいなメッセージが強いイマドキの社会で、少なからぬ人が感じる不安だろうと思う。共感できるせりふが随所で光る。
結婚に反対する康子の母の言葉がまた心にしみる。「人は他人を愛さなくちゃ」。この言葉を、いまどきハヤリの「妹萌え」に対するアンチテーゼとも読み取ってしまうのは、私のうがちすぎ?
同時収録されている「夏の声」も、過去と現在が交錯する良作だ。多くの女性は、自らの高校時代を思い出し、切なくなるに違いない。
私は菅野彰といえば、「海馬が耳から駆けてゆく」など、爆笑日常エッセーしか読んだことはなかった。この作品で、名作家であることを再認識しました、菅野彰!
本書のあとがきによると、山田睦月は「原作つきのお仕事を厭わない方」なんだそうだ。この表現からして、原作つきのお仕事を厭う漫画家が多数派なのだろうことが読み取れる。少数派らしい山田睦月は、これまでも「アズ・ユー・ウィッシュ」「The ghost of my life」(新書館)など、原作つきの良作を書いてきた。しかし、原作つきでない「ハンプティ・ダンプティ・ロード」もなかなか傑作。人種差別を受けて育ったヴィイが、運び屋の仕事を手伝いながら世界を知っていく成長物語。山田睦月はとにかく寡作なんだが、読んだあとに必ずほんわかした気持ちになれる作品をかく人だ。ぜひ息長く漫画を続けていってほしい。
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