| 松尾慈子の漫画偏愛主義 November
12, 2004 |
世界で一番幸せなハズ
松苗あけみ
講談社 税込み410円 |
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松尾慈子
1992年朝日新聞入社、金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、名古屋本社報道センター記者。漫画好き歴は四半世紀超。
一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。 |
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|バックナンバー|
エド村崎のフィルム・マニアーク
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晩婚化が言われて久しいが、女性雑誌の世界での人気企画はやっぱり「結婚」なんだとか。加えて、ウエディングプランナーという職業は、OLが転職してなりたい仕事ナンバーワンなんだそうだ。いつの時代も女性は結婚を夢見るものなのか。
シュールな恋愛漫画を描かせたらピカイチの松苗あけみ。88年に講談社漫画賞を受賞した「純情クレイジーフルーツ」(略称・純クレ)以降もその力が衰えることがない。
表題作は凄腕ウエディングプランナー、神代が主人公。お客様の満足度は常にトップ。結婚式前にゴタゴタするカップルの問題もさらっと解決。なのになぜか本人は結婚式をドタキャンされ、ダメ男の元カレと今も別れることができない。他人からみればデキる女の神代も、舞台裏はただの人。そういう現実を、松苗あけみはシュールに、時には皮肉を込めて、それでいて愛情をもって描く。
松苗あけみは「純クレ」の時代から、「女性の恋愛は自由である」ことを描いた。主人公たちは、男の愛を獲得しようと四苦八苦するけれども、それはいい男を捕まえて生活レベルのランクアップを目指すようなものだった。主人公たちは、自己の存在意義を男に求めてはいなかった。その割り切りのよさが、ヘテロ恋愛漫画を好まない私にも心地よかったのかもしれない。いや、最終的には心から愛する男と結ばれるってのが少女漫画のお約束で、松苗漫画もそうなのですがね。
そして「純クレ」の時代を経て、21世紀を迎え、表題作の神代は元カレをペット扱いすることで関係を保っている。生活レベルアップを望めない男でもOK、あなたは愛情をくれればいいの、私が稼ぐ、というワケなのか。神代はこう言っている。「ダメ男なんてキライよ。でも、家に帰るといつもいてくれて、消えてほしいときはすぐ消えてくれて そしてまた必ず帰ってきてくれる男なら許せる」。ん〜、これって、遊びたいときには取り出して、いらないときには小さく片付くリカちゃんハウスの家族みたいだ。そこまで女性が狭量になったってことなのか。そこまで恋愛が多様化してきたってことなのか。
そういえば松苗あけみは「アパートの鍵あいてます」(講談社)では、大人になりきれない男女を描いて、「子どもができてもペット状態の男なら、1人で育てた方がマシ」みたいな話を書いていたなあ。そうか、最近の松苗はダメ男がテーマなのか?
「純クレ」の姉妹作ともいえるだろう「カトレアな女達」(白泉社)は、またハジケっぷりがいい。養老園に入っている3姉妹のパワフルな日常を描いている。ブランド大好き、老いを受け入れられず、「いい女」と周囲に認められることに血道をあげる・・・バブルを生きてしまった現在30代半ばの女性たち(私を含む)は遠い将来、こういう「大人子ども」になるんじゃないのかなあ。いや、すでになっているのか・・・。
長寿漫画家なだけに、松苗あけみにはもう食傷、という漫画読みの方々もいるかもしれない。しかし、彼女の漫画は大ハズレがない。本屋でそそられる漫画を見つけられなかったときにも、松苗あけみの新刊を買えば、読後に一定の満足を与えてくれるのが分かっている。それって結構スゴイことだと思うのだ。
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