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| 松尾慈子の漫画偏愛主義 November
19, 2004 |
不思議飴玉
ユキムラ
ビブロス 本体562円 |
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松尾慈子
1992年朝日新聞入社、金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、名古屋本社報道センター記者。漫画好き歴は四半世紀超。
一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。 |
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|バックナンバー|
エド村崎のフィルム・マニアーク
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アスパラクラブで初めて私のコラムを知ったという方、こんにちは。すでにご存じかもしれませんが、私は時々、少女向け男性同性愛漫画(世に言う「ボーイズラブ漫画」)を取り上げます。おなじみの方には、すでにご存じの通り。なにしろ「偏愛主義」ですから。
今回もボーイズラブです。お嫌いな方は、スルーしてください。
なんだかほんわかした感じが持ち味のユキムラ。現代を描いてもなぜか懐かしい。11月発売の表題作でもその味は全開だ。
表題作は短編集。「社の中」では、大学生の男の子2人が主人公。キツネの糞(ふん)を踏んだのが縁で、2人はキツネの社会に連れて行かれる。踏んだ松田は「生き神さま」あがめられ、オマケでついてきた吉本は首輪につながれる。人間社会では、キツネをお稲荷様とあがめたり、ただの動物扱いをしたりする。キツネ社会ではその逆なのだ。
キツネの社会がまたほのぼのと、また生き生きと描かれている。畳にすだれ、閨(ねや)も特製。お風呂に三助(さんすけ)がいるのもまた和風。生き神さまに喜ぶキツネたちの宴は、私自身にはそんな体験もないのに、なぜか懐かしい。
続編の「不思議飴玉」は一転して西洋風。怪しい教授から松田がもらった飴玉は「一度だけ人を使役できる」という怪しいシロモノ。松田に好かれている吉本は「絶対エッチなことされると思ってビクついてます」状態になってしまって、またカワイイ。あなたならどうします? 人を使役できる飴玉。使役できる相手が、自分の好きな相手かそうでないかによって、全然かわってくるよなあ。
結局、松田がやってもらったことは、何げないこと。そう、好きな人が何か自分のためにしてくれたとしても、それは自発的じゃないと、寂しいだけだものね。その点で、吉本に無理強いしなかった松田っていい男。
ユキムラのデビューコミックスはボーイズラブ風味のファンタジー「エウクロス物語」(ビブロス)。魔法使いに拾われて育てられた少年と魔法使いの交流、亡き妻を愛し続ける竜王とエルフ(妖精)の少年との100年。どれもほのぼのなんだが、どこか切ない。思うに、ユキムラは、愛する年長者との別れを体験したことがあるのではないだろうか。例えばおばあちゃん、おじいちゃんとか。死別を描きながら、その深刻さが伝わってこない作品が最近は多いような気がするけれど、ユキムラの中には、確かに死別する寂しさと切なさがあるのだ。
とはいえ、文中に挿入されている年表が、私にはちょっと興ざめ。架空世界の年表ってそんなに読者、読みたいかなあ? 私がファンタジーRPG(ロールプレイングゲーム)をやり慣れていないせい?
ちなみに、文中の三助とは、風呂で体を洗ってくれるサービスのこと。これって死語?
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