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今週のAERA
産廃マンモスのし歩く
万博に捨てられ学生に拾われた

2004年10月18日号
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シベリアの雪原をのし歩く人造マンモスの完成予想ジオラマ。「1万年後にこれを見る人類がいる」と空想する力が必要だ。
ライター 樋口ヒロユキ


 産廃の巨大マンモスを思い立ったのは、ヤノベケンジさん(39)。未来の廃墟をテーマにした作品づくりで、世界的な知名度も高い。

 きっかけは、愛知万博からの「アートプロジェクトを企画して欲しい」という依頼だった。愛知万博は、大阪万博の月の石に匹敵する企画として、冷凍マンモスをシベリアから発掘して展示する企画を進めており、博覧会の目玉としている。ヤノベさんはこれに疑問を持った。
「ロケットで月に行くのと船でシベリアに行くのとでは、距離的にも技術的にもレベルが全然違う。もっと途方もないことをすべきだと思った」

●途方もなさが学生魅了
 そこで立案したのが人造マンモス。巨大な四足歩行ロボットという課題に取り組むことで、技術の限界に挑戦。材料には産業廃棄物をリサイクルし、市街地を歩かせる。だが、動力源にはあえてディーゼルエンジンを採用、黒煙を噴き上げて稼働させるという。なぜディーゼルエンジンなのか。
「だってディーゼルエンジンのトラックは現に今、世界のどこでも走ってるじゃないですか」

 現に環境破壊があるのにそれを無視して、あたかも環境破壊などないかのようにふるまう展示ではなく、むしろ人類の所業を後世に伝えるべきだという理屈だ。頭部が巨大化しすぎて滅亡したと言われるマンモスと、欲望やテクノロジーが肥大化して危機に立つ人類のイメージを重ね、シベリアの永久凍土に埋設。20世紀の技術の両面を伝えるタイムカプセルにする狙いがある。

 だが、1万年後に、それを掘り起こす人類が果たして生き残っているかどうか。そう問うとヤノベさんは大笑い、そんなことは分からない、と答えた。1万年という単位でモノを考えられない、その萎縮ぶりがむしろ問題なのだと。
「携帯電話もインターネットも、数十年前には『あったらいいな』という程度の、いわば空想の産物でしかなかった。空想しなければ実現できないんですよ」

 愛知万博の正式プランとして提案された人造マンモスだが、膨大なコストと「現実性のなさ」がアダとなって却下された。ところが逆に、その途方もなさに魅了された京都造形芸術大の学生たちが、プロジェクトの続行を買って出た。8月末にはヤノベさんと学生が共同で、プロジェクトの全貌を予告する展覧会を京都のギャラリーで開催。完成予想ジオラマを展示したほか、オープニングには京大出身のロボット・ベンチャー経営者、高橋智隆さんも参加。共同での開発を示唆して会場を大いに沸かせた。

●試される大人の空想力
 学生スタッフの一人である中嶋透さんは、ヤノベさんの意図とは逆に、ディーゼルエンジンこそが環境問題を解く鍵と見ているという。ガソリンエンジンよりディーゼルの方が、熱効率の面で優れているからだ。ギャラリースタッフの伊藤悠さんは、次は小さくても歩行するマンモスを造りたいと語る。

 ヤノベさんはこうしたスタッフによる「プロジェクトの読み替え」を、大いに歓迎するという。自分の夢に触発されて学生が夢を広げていく「インスピレーションの飛び火」が大事なのだ、とも。
「人間はこれだけ面白い発想ができるんだと提示できる大人が少なくなっている。そこが問題です」

 愛知万博に替わる新たなスポンサーが現れるかどうか。まずは学生たちがヤノベさんに応えた。今度は大人たちの空想力が試される番である。




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