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| 「キャスターClick」 October
18, 2004 |
ザクロの季節
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 | 穴吹 史士
アナブキ・フミオ
社会部記者、AERA副編集長、週刊朝日編集長、女性誌uno!マネジャーなどをへて、インターネット・キャスター。be編集部記者。
copyright Saibara Rieko |
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高成田亨のニュースDrag
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通勤電車の窓から、ぼんやり外を眺めていると、人家がたて込んだ彼方に、緑青を吹いた大きな屋根がぬうっとそびえ立っているのが見える。それが下総で名刹とされる中山法華経寺の山門らしいことは、見当がついていた。いちど訪ねてみたいと思いつつ、しかし、最寄りの駅に快速電車が停車しないこともあって、30年ばかり、車窓からぼんやり眺めるだけで終わっていた。
思い立って先日、各駅停車に乗り換え、参拝してみると、予想より遥かに巨大な伽藍だった。日蓮が最初に開いた寺だといい、広い境内に国の重要文化財のお堂や塔が点在、祖師堂の額の文字の闊達さに感心していると、本阿弥光悦の筆だという。わりあい近くに住みながら、緑青の屋根しか知らなかったことを少し恥じる。
本尊は日蓮自らが彫ったという法華経の守護神・鬼子母神だそうだ。参道と境内をつなぐ小橋の擬宝珠が、ザクロの形をしているのは、この果実が鬼子母神のシンボルだからだ。人間の子どもを常食していた鬼女に、釈迦が代用食としてザクロを与えたという説話に基づいている。
偶然ではあるが、この1カ月ばかり前、東京・雑司が谷の鬼子母神でザクロを描いた絵馬を買ったばかりだった。近くまでゆく用があり、ついでに寄っただけだったが、お堂へのアプローチがおもしろかった。都電の無人駅で降りると、幅の狭い参道がある。両脇に身分不相応なほど立派なケヤキの並木がそびえ、緑が頭上を覆っている。東京の名所は、まあまあ歩いた方だが、この方面には不思議に縁がなく、その存在を知らなかったことを恥じた。
生まれて3歳のころまで育った家の中庭に、ザクロの木が1本植わっていたのをなんとなく憶えている。脳に最初に刷り込まれた植物だったかもしれない。そのせいか、鮮やかな緑と、蝋細工のように艶やかな朱色の花を見ると、いまでも嬉しい気分になる。
実の形も好きだ。売っているのを見ると、つい買ってしまう。しかし、味にはいつも裏切られてきた。何年か前から出回り始めたカリフォルニア産の大きなザクロも、はやばやと試して、見かけほどの美味でないのに落胆した。
3年ばかり前の中秋のころ、中国西安の郊外で、ザクロ街道とでもいおうか、沿道ザクロの露店だらけという道を走っていて、誘惑に負けたこともある。中国では、中秋に月餅とザクロを食べる風習があるのだそうだ。
邦貨100円くらいを払うと、「酸っぱい方? それとも酸っぱくない方?」と聞かれ、「取り合わせて」と頼むと、ソフトボールをでかくしたようなのを、十数個手渡された。酸っぱい方も、酸っぱくない方も、ともに酸っぱく、1個食べて、あとは持てあます。すぐ捨てるのに忍びなく、しばらく持ち歩いたが、移動の飛行機の中で袋から転がり出て、機体の傾きに従い、あっちへ転がり、こっちへ転がりするのに閉口。
つい3日前、またまた引っかかる。奈良の田舎で路傍で売りに出ているのを発見。100円で4個は、中国と比べいかにも高かったが、ゴルフボール大のも混じり、小ぶりで小股の切れ上がった姿に惹かれた。日本伝統のなつかしい味を期待してかぶりついたところ、なつかしいことはなつかしかったが、なつかしいまずさだった。
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