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アサヒ・インターネット・キャスター



「ニュースDrag」 October  18, 2004

ダイエーはなぜ倒産しないのか

高成田の顔写真高成田 享
タカナリタ・トオル

経済部記者、ワシントン特派員、アメリカ総局長などを経て、論説委員。
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景気の低迷で、経営が行き詰まっていたダイエーに対する総額5200億円の金融支援を柱とする「再建策」が決まったのは、2002年のことだった。

「そごう」「マイカル」と流通業の大手の経営が破綻、ここでダイエーまで倒産すれば、貸手の銀行も行き詰まり、日本経済がパニックになる。そんな「空気」がダイエーを倒産させなかったのだろう。「大きすぎると、つぶれない」というのは、大手銀行の不倒神話で使われた言葉だったが、それが小売業にも適用された場面だった。

当時、私はワシントンにいて、日本は本当に不思議な国だと思った。米国のエコノミストでも、インベストバンカーでも、ダイエーの話になると、「なぜ、法的な整理をしないのか」と言われるのが常だった。

「法的整理になれば、ダイエーの店舗は、その現在価値で評価されるわけでしょう。日本は地価が下がっているのだから、新しいビジネスを始めるのに都合のいい土地と店舗がたくさん提供されますよね。全部の店を買うのは難しいにしても、買い手はいくらでも出てくるでしょう。従業員だって、これまでと同じ水準は無理としても、かなり再雇用できる。日本経済を活性化させるには、それが最善の策でしょう」

まさに、死肉を食うハゲタカの論理だが、米国は、この論理で、「不良債権問題」を乗り切ってきた。1980年代後半から90年代にかけての貯蓄・貸付組合(S&L)危機のときも、比較的に短期間でこの金融危機を処理できたのは、ばさばさと銀行も企業も倒産させたからだ。

そういう経済感覚が染みこんでいる米国人からすれば、「金融支援」は問題先送りの邪道としか映らなかったし、特定の企業に対する「債権放棄」は、「仲間うち資本主義」に通ずる不公正な方策という印象をもたれていた。私もその通りで、このやり方はいずれ破綻すると思っていた。

ダイエー問題の原点が2002年の救済にあったと考えれば、その2年後のドタバタ劇は、当然の帰結であり、舞台に乗っている人々に対して、申し訳ないけれど、だれにも同情する気になれない。

「民間による自主再建」。ちょっと待ってよ。6000億円余の債権放棄を銀行からしてもらった企業が、それでも足りなくて、さらに数千億円の債権放棄が必要としたうえで、「自主再建」なんて言わないでよ。

「産業再生機構のもとで再建」。最終的には、ここに落ち着いたようだが、「大もの」を取り上げたい再生機構、再生機構に渡すことで不良債権が優良債権に変換する魔法に誘われた銀行、といった思惑を想像すれば、再生機構でよかったね、とはとても言えない。しかも、将来赤字になれば、国民の税金で補填するということだから、わざわざやっかいものを引き取ることもなかろうに、という気にもなる。

悪たれをついてばかりとは、いかないので、「再生」の条件を考えると、かぎりなく、法的整理の状況を作り出すことが必要だ。つまり、資産はできるだけ現在の市場価値で評価する。そうすれば、切り売りしても、買い手はたくさん出てくる。いまの経営陣は、総退陣させる。経営が破綻するような企業では、さまざまなウミが残っているから、現在の経営陣を少しでも残せば、その汚点を隠そうとするために、再建が遅れることになる。新しい経営者は、流通の専門家を探すべきだ。ダイエーの破綻は、巨額の借入金ばかりでなく、お客を集めるという意味での商売自体がうまくいってなかったようだ。新しいビジネスのスタイルが必要だと思う。

野球チームはどうするのか。あれだけの宣伝効果、集客効果のあるビジネスを活用できない経営者は、再生に必要ない。「捨てる神あれば、拾う神あり」ではないか。

ここ数年のダイエー問題で教訓を得るとすれば、市場から退場を迫られている企業や産業をむやみに助けることは、必ずしも全体の利益にならないということだ。



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