asahi.com
天気  辞書  地図  サイト案内  Top30 
サイト内 WEB
コラム 社 会 スポーツ 経 済 政 治 国 際 サイエンス 文化・芸能 ENGLISH 
  >AIC  >天声人語  >日本@世界  >ポリティカにっぽん  >風考計 
     
 home >コラム >AIC   


アサヒ・インターネット・キャスター



「地図一途」 December  02, 2004
野口英世生誕地

野々村氏の顔写真野々村 邦夫
ノノムラ・クニオ

30年余の公務員生活の大半は測量と地図に関係。99年、国土地理院長を最後に退官。広島工業大学教授などを経て現在財団法人日本地図センター理事長。仕事柄、旅する機会が多く、駅弁と地酒に造詣が深い、ハズ。


絵・宇田川のり子
バックナンバー 岩城元の「ハルピン発なんのこっちゃ」


野口英世は1876(明治9)年11月9日、福島県耶麻郡翁島村三城潟で生まれ、そこで育った。その辺りを現在の地形図で見ると、磐梯山の南麓、猪苗代湖に近く、周囲を田んぼに囲まれ、国道49号に沿って三城潟の集落がある。そのような様子は、ここに掲載した1908(明治41)年測図、1917(大正6)年発行の2万5000分の1地形図「猪苗代」で見ても、そう変わらない。



野口英世は、この地で清作という名前だった幼少時代を過ごした。発行されたのは大正時代だが、実際に測量が行われたのは10年近く前の明治末期というこの地形図は、野口英世の幼少時代と同時代の地図といってよいだろう。現在の2万5000分の1地形図(平成12年修正測量、平成13年発行)では、国道沿いの建物の1つに「野口記念館」という注記(文字による説明)があるが、この地形図にはない。野口英世の生家(現在は記念館になっている)を特定するには、現在の地形図のほうがよい。

一方、この地形図で見られる「翁島村」という注記や、現在は国道49号になっている道路に付されている「越後街道」という注記は、現在の地形図からは消えている。また、「岩越線」という注記は、「磐越西線」に変わっている。この鉄道のこの辺りの開業は、野口英世が1896(明治29)年、20歳で上京した後の1899(明治32)年だから、鉄道に注目すれば、この地形図は、彼の幼少時代のものとはいえなくなる。

さて、最近になって、改めて野口英世が注目を浴びた。先月(11月)1日、野口英世の肖像が刷り込まれた新千円札が発行されたからだ。地元猪苗代町では、祝賀行事や各種の催し物で賑わったらしい。日本が世界に誇る科学者の肖像がお札に採用されたことは、私も嬉しく思う。地元がこのことを喜び、祝うのは、自然な成り行きだ。

12月に入り、猪苗代湖畔や磐梯山麓の美しい紅葉の季節も過ぎ去った。地元観光協会がやっていた新千円札発行記念「1泊素泊まり千円キャンペーン」も、11月30日までだった。2万5000分の1地形図「猪苗代」は、「旬の地図」ではなく、時季遅れの地図になってしまったかもしれない。しかし、12月は、ボーナス、歳末助け合い、借金取りなど、お札が活躍する月である。野口英世の肖像にも、これからますますお目にかかることになるだろう(お目にかかるなら福沢諭吉や樋口一葉の方がいいという人も多いだろうが)。大変ご苦労様なことではあるが、野口英世には、俗世間で更なる活躍をしていただく季節である。

それともう1つ、冬は、日本酒が美味い季節である(日本酒は冬でなくても美味いという人もいるだろうが)。野口英世の故郷会津地方も、日本の酒どころの1つである。その会津に、「Dr.野口」という銘柄の日本酒があることを最近知った。会津若松市の末廣酒造の酒である。

大学で私の講義「地図学」を聴講した学生の1人に、実家が猪苗代町という学生がいた。その彼にこの酒をもらった。その後ほどなく、戊辰戦争のときに会津と深い同盟関係にあった二本松の出身の友人からも「Dr.野口」を貰った。500ml詰めのガラス壜がフラスコの形をしている。箱には、野口英世の肖像が描かれている。見かけも中身も、貰って嬉しい酒だ。貰い物なので値段は知らないが、福沢諭吉級や樋口一葉級ではなく、野口英世級ではなかろうかと思っている(外れたら、くれた人に悪いが)。



1868(明治元)年には戊辰戦争で敗れ、1888(明治21)年には磐梯山の大噴火という災害に見舞われるなど、苦難の多かった明治時代の会津地方からは、野口英世を始めとして多くの俊秀が世に出た。地形図からは、苦難の歴史が直接伝わってくるわけではないが、少なくとも都会的な賑わいや経済的な繁栄は読み取れない。紙幣や酒を連想させるわけでもなく、これといって面白みのある地図ではない。そんな地図でも、「ここが野口英世の生誕地だ」という具合に利用される機会があるこの地形図を、他の地形図は羨ましく思うかもしれない(もし地図に心があるのなら)。



NONOの目

デザイン・福田繁雄



ご意見はこちらへ・・・

Designed by TUBE graphics 


| 社会 | スポーツ | 経済 | 政治 | 国際 | サイエンス | 文化・芸能 | ENGLISH |
GoToHome ニュースの詳細は朝日新聞へどうぞ。購読の申し込みはインターネットでもできます。 GoUpToThisPage
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
| 著作権 | リンク | プライバシー | 広告掲載と注意点 | アサヒ・コムから | 朝日新聞社から | 問い合わせ |
Copyright Asahi Shimbun. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission