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アサヒ・インターネット・キャスター



「地図一途」 December  16, 2004
広島の牡蠣筏

野々村氏の顔写真野々村 邦夫
ノノムラ・クニオ

30年余の公務員生活の大半は測量と地図に関係。99年、国土地理院長を最後に退官。広島工業大学教授などを経て現在財団法人日本地図センター理事長。仕事柄、旅する機会が多く、駅弁と地酒に造詣が深い、ハズ。


絵・宇田川のり子
バックナンバー 岩城元の「ハルピン発なんのこっちゃ」


12月に入り、だんだんと寒くなってきた。夏の暑さも嫌だが、冬の寒さも嫌だ。四季の移り変わりがあるのは日本のよさだが、嫌なものは嫌だ。とはいうものの、確かに季節の変化は悪いことではなく、だんだんと寒くなるに連れてだんだんとよくなるものもある。例えば、寒さが厳しくなってくると牡蠣が美味くなるのだ。

牡蠣は、世界のあちこちで獲れる。日本でも、あちこちで獲れる。厚岸の牡蠣は美味かった、夏に能登で食った岩牡蠣は美味かった、ロスアンジェルスでご馳走になった牡蠣のハーフシェルは美味かったなどと、牡蠣を食べると旅の思い出が蘇る。私はしばらく広島に滞在したことがあるので、牡蠣を食べると広島の思い出も蘇る。

一口に広島の牡蠣とはいうものの、広島の人は、どこそこの牡蠣が美味い、どこそこのはもっと美味いと、広島の中でも狭い地域の名を挙げる。広島港から至近の金輪島付近も、牡蠣の産地として有名なところだ。島のそばに牡蠣の養殖場があることは、地図にも描かれている。海面に牡蠣筏がびっしりと並んでいる光景が、地図から想像される。広島港からは、宮島、江田島、似島、能美島、呉、松山、今治、釜山などへ多数の旅客船が就航している。そういう船に乗ると、牡蠣筏が見える。私にとって、懐かしい風景だ。



牡蠣筏の場所が地図に描かれているといったが、普通の地形図にはその表示はない。ここに掲載した地図は、国土地理院発行の2万5000分の1沿岸海域地形図「広島」の一部である。沿岸海域地形図というのは、国土地理院が実施した沿岸海域基礎調査の結果作成された地図の1つであって、このほかに沿岸海域土地条件図という地図がこの調査の成果として作成されている。

この調査は、陸地に近い海の利用や保全を適切に行うため、沿岸付近の海陸の自然環境や港湾・航行施設、海面・海中に設けられた構造物、開発行為の規制地域などについて調べ、その結果を前述の2種類の地図と報告書にまとめたものである。

この地図を利用する人は、地図の性格上、浅海の利用や保全に関する仕事に携わっている人がメインである。つまりこの地図は、プロ用の地図である。しかし、釣り人の中には、この地図を利用している人もいると聞いている。どんな利用の仕方か、この地図を利用すれば釣果が上がるのかどうか、釣りに関してド素人の私は知らないが。

そういう地図だから、牡蠣筏がどこにあるのかという情報は、豊富な情報の中のほんの一部のものである。しかし、私にとっては、なかなか興味深いものだ。広島近辺の瀬戸内海には、あちこちに牡蠣筏があることがこの地図から分かる。宮島の近くには、特に広い範囲にわたって「かき養殖場」の表示がある。広島の牡蠣の中では、宮島のそばの地御前(じごぜん)というところのものが一番美味いという知人もいた。

全世界でどこの牡蠣が美味いのか、日本全国の中では、広島では、というような議論をしたらどうなるのだろう。恐らく、コンセンサスを得ることは無理であろう。あちこちに美味い牡蠣があるという結論が妥当ではないかと思うが、それに異を唱えて、絶対にここ、という人もいることだろう。

今頃広島では、いや、そのほか北半球のあちこちで、牡蠣の収穫に大童に違いない。手作業でやるしかない牡蠣の殻を剥くという仕事には、大勢の人が携わっているはずだ。その中には、在日外国人も多いと聞く。自分で殻を壊して食べることもあるが、たいていは剥いてある牡蠣を食べるというのが私の実態(そういう人が圧倒的に多いと思う)。見知らぬ大勢の人が働いてくれるお陰で、美味い牡蠣が食えるのだ。本日の地図も、旬の地図のつもりである。



NONOの目

デザイン・福田繁雄



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