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アサヒ・インターネット・キャスター



「地図一途」 December  23, 2004
鍋の季節

野々村氏の顔写真野々村 邦夫
ノノムラ・クニオ

30年余の公務員生活の大半は測量と地図に関係。99年、国土地理院長を最後に退官。広島工業大学教授などを経て現在財団法人日本地図センター理事長。仕事柄、旅する機会が多く、駅弁と地酒に造詣が深い、ハズ。


絵・宇田川のり子
バックナンバー 岩城元の「ハルピン発なんのこっちゃ」


先週のこの欄では、広島の牡蠣養殖場を示している地図を紹介した。国土地理院の2万5000分の1沿岸海域地形図である。牡蠣にもいろいろな食べ方があるが、寒くなってくると、鍋にして食いたくなる。今週は、鍋の地図を探してみるか。これからは、鍋の季節だ。

こんないい加減な気持ちで記事を書いてはいけないとは思うが、時節柄、鍋にこだわってみたくなったのである。去る12月10日、I君(30歳・男性)から携帯に、「年末恒例」という標題のメールが来た。「鍋にチャリンとしてきました」とあった。先を越された。で、その2、3日後、私のほうは、パサッとやった。彼よりはるかに年上の私としては、せめて量的にはこちらの貫禄を示したいと思って、野口英世博士を起用した。渋谷駅前で、社会鍋に1000円入れたのである。隙間から覗いた鍋の中には、既にたくさんの1000円札が入っていて、私が入れた1000円札は、実際には何の音も立てなかった。

「社会鍋へのパサッ(以前はチャリン)」は、いつの間にか私の歳末恒例行事となってしまったが、社会鍋の由来などはよく知らなかったので、救世軍のホームページを見てみた。それによると、1894(明治27)年にアメリカ・サンフランシスコで行われた、恵まれない船員の家族にスープの給食をするための募金活動が端緒だそうだ。三脚に吊るされた船員キャンプ用の黒鍋は、「クリスマス・ケトル」と呼ばれるようになった。「たえずこの壺を煮立たせてください」というのが、当時のキャッチフレーズである。

日本の救世軍では、1906(明治39)年に歳末助け合い運動として「慰問かご」計画を始めたが、更に1909(明治42)年、街頭募金活動を開始した。このとき、アメリカのクリスマス・ケトルのアイデアを取り入れ、スープ壺の代わりに、年越し雑煮というつもりで鉄鍋を吊るすことになったのだという。「集金鍋」「慰問かごの鍋」「三脚鍋」「三脚の慈善鍋」などと呼ばれたこの鍋は、1921(大正10)年に「社会鍋」と呼ぶことにしたとのことである。

アメリカではスープ、日本では雑煮、というところが何とも面白い。社会鍋が、私のような非クリスチャンも含めて多くの人々に支持されている裏には、理念、活動内容、実施主体の品格、伝統などに対する理解や信頼などとともに、付随的なものであるとしても、アイデアのよさもあると思う。

さて、前置きはこのくらいにして、鍋の地図に移ろう。今回もまた安直な方法で、数値地図25000「地名・公共施設」を使って「鍋」という地名を探してみた。全国の2万5000分の1地形図の中で「鍋」という地名は、7ヶ所に見られる。何故か、全て九州である。ここに示したのは、2万5000分の1地形図「下沖洲」にある、熊本県岱明町の「鍋」である。そばに「上鍋」「磯鍋」「鼈頭洲」という地名が見られるが、「鍋」の字の大きさは、それらよりもやや大きい。「鍋」は、大字(集落の総称)の名前だからである。

「角川日本地名大辞典43(熊本県)」(角川書店)には、この地名についての説明がある。現在は大字名だが、1955(昭和30)年までは村名だったとのことである。この付近で大規模な干拓が行われたこと、塩田があったこと、寛政4年の雲仙岳の噴火による大津波で多くの犠牲者が出たことなどが同書にかかれているが、地形図を見ると、なるほどと思われる。地名の由来については、特に書かれていない。

「鍋」というところへ行くと、どんな鍋ものが食べられるのだろうか? 地形図を見ながら、魚介だとか、山菜だとか、中身を想像(空想かもしれない)するのも面白い。とにかく、そこで食べる鍋は、本場の鍋である。岱明町の「鍋」では、有明海の海の幸が入っていることは間違いなかろう。これからの季節、いろいろな鍋が人々を暖める。身も心も。

NONOの目

デザイン・福田繁雄



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