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岩城元の「ハルピン発なんのこっちゃ」
October 14, 2004
たかが1元、されど・・・
岩城 元
イワキ・ハジム
むかし新聞記者、いまは中国ハルビンの大学で「教師」4年目。教師をボランティアでやる代わり、授業料免除の「留学生」の資格も与えられているのだが、授業についていけず休学中。
似顔絵:岸久理
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野々村邦夫の「駅弁地理学」
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クイズをひとつ――ハルビンのバス停留所で若い男女のグループが2組、バスを待っている。仮に5人ずつとしよう。一方が中国人、他方が日本人のグループなのだが、みんな黙っているせいもあって見分けがつかない。やがて、バスがやってきて、10人はグループごとにバスに乗り込んだ。ここで中国人と日本人との見分けがついた。
どうしてか?
中国人は、だれか1人が5人分のバス代5元(1元≒13円)を一緒に料金箱に入れている。日本人は、5人がそれぞれ1元ずつを料金箱に入れている。100%このようだとは断言できないが、まずこれが普通だ。中国人の5元は1人から1元ずつ集めたものではなく、だれかの奢りである。
以前にもちょっと書いたことがあるが、レストランで何人かで食事した時、この地の人たちは割り勘を嫌う。だれかがさっと払ってしまう。奢ってしまう。そうかと言って、奢られっ放しというわけにはゆかない。いつかどこかで奢り返さないといけない。奢ったほうは奢ったことをちゃんと覚えている。奢られっ放しだと、嫌がられ、やがて誘ってもらえなくなる。
バス代をだれかがまとめて払うのも、レストランでの「奢り奢られ」と同じことだ。いつか奢り返さないといけない。奢られた分と奢った分が完全に等しくなることはなくても、常に気をつけていないといけない。なかには、いつも払わない輩もいるらしくて、「だれそれはキタナイ」なぞという話を中国人から聞かされることもある。
でも、奢られたのを覚えているなんて、僕はそんなの面倒くさい。だから、学生たちと一緒にバスに乗る時は出来るだけ僕が奢るように努めている。わずかな額でもあるし、そのほうが気が楽だ。が、学生たちはけっこう素早くて、奢られてしまうこともままある。
先日、わがハルビン理工大学日本語科から日本へ留学する学生たちをハルビン駅で見送った帰りのこと。一緒に見送りにやってきた大勢の学生のうち7〜8人とバス停に向かった。バス代は僕が払おうとポケットを探っていると、バスがやってきた。みんな小走りになった。バスのドアが開いた。すると、一番前にいた男の学生が「先生、もう払いました。早く、早く」と叫ぶ。仕方なくバスに飛び乗ったが、くだんの学生はまだバスの外にいて「5人、6人・・・」と数えている。バス代はまだ払っていない。あとでまとめて1人で払うつもりなのだ。
ハルビン工業大学、ハルビン医科大学など他の大学の学生で日本語を学んでいる数人と食事をする機会があり、僕が奢った。その帰り、1人の男の子とバスが同じだった。2人のバス代2元は先に乗った僕が払った。
あとで伝え聞くところだと、彼は僕がバス代を払ってくれたのがうれしかった、と何度も言っていたそうだ。まだ親しい間柄でもないのに、「郷に入っては郷」式の気配りに感動したのだとか。食事をごちそうしたことに対しては、特に反応はなかったが、そのあとの効き目のある1元だった。
日本の大企業の現地法人に勤める中国人女性の話――日本からの客と一緒にバスに乗ることが時々ある。バス代は彼女が払う。すると、「バス代くらい持っているのに・・・」と、日本人から1元札を見せられることがある。つまり、自分だけのバス代だ。そんな時、彼女はイヤーな気持ちになるそうだ。「他人のことを考えない、この日本人のケチンボ!」といったところだろうか。
バス代までが奢り奢られ――これを「悪習」と言う中国人もいるが、いずれにしろ、コワーイ「1元」ではある。
最後に、クイズをもうひとつ――僕が1人でバス停に行くと、中国人の知り合いにぱったり出会った。どうやら同じバスに乗るらしい。バス代の払いはどうすればいいのか? 正解は――こんな時はそれぞれで払う。ただし、相手に「小銭はありますか」と一応は尋ねてみるのが、望ましい態度なのだそうだ。
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