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アサヒ・インターネット・キャスター



「NY流行りもの」 December  16, 2003
退役軍人の手紙

田村氏の写真田村 正人
タムラ・マサト

社会部記者、警視庁クラブキャップ、運動部長、情報企画室副室長などをつとめ、99年12月から朝日新聞アメリカ社、インターナショナル社社長。
バックナンバー 美濃口坦の「欧州どまんなか」


かつてベトナム戦争で戦ったアメリカの退役軍人のスタン・ゴフという人が、イラクに駐留する兵士たちに宛てて書いた公開書簡が、ネットを通じて広がっている。「兵士たちよ、人間らしさを手放すな」と題された手紙は、自分の経験をもとに、兵士仲間の言葉で語りかける。

私は退役軍人だ。私の息子は空挺部隊員として、諸君とともにイラクに駐留している。
1970年、私は空挺部隊員としてベトナム戦争に派遣された。
戦争に行く前、でたらめな思想を植え付けられた。テレビや映画からは「男の中の男として生きるには何をすべきか」を教わったし、ベトナムに行ったことのない近所の人たちからは「ベトナムが共産化しないよう、米軍が戦わなくてはいけない」と教え込まれた。米兵の使命は「悪いベトナム人から、良いベトナム人を救う」ことであり、「悪いベトナム人が、カリフォルニア沿岸に攻め込まないように」彼らをたたきのめすことだった。そのためにわれわれは駐留し続け、5万8000人の仲間が殺され、300万人のベトナム人を殺してしまった。

イラクの大量破壊兵器が米国を脅しているという話を最初に聞いたとき、「そんなことはあり得ない、湾岸戦争で散々痛めつけられた後、12年間も経済制裁を受けているイラクが脅威だなんて、いったいどこの誰が信じる」とあきれた。しかし、30年前、ベトナムがアメリカの脅威になっていると、自分も含めてほとんどの米国民が信じ込んだのを思い出した。

政治家たちは、諸君が「偉大な解放者」として、イラクの民衆に歓迎されるだろうとうそをついた。ベトナム戦争でも同じようなことを言ったものだ。

私がベトナムに到着する前に、米軍はすでに村々を焼き、家畜を殺し、畑や森に毒をまき、市民をスポーツ射撃の的とし、村人をレイプして虐殺していた。ベトナム人被害者たちにとっては、現地に到着したばかりの自分と、すでに蛮行を奮っていた残虐な米兵たちとの見分けがつかない。現地で私は、たいへんな目に遭った。

政治家たちが諸君に知らせなかったことが他にもある。1991年から2003年の間に、150万人のイラク人が、栄養失調や医療不備のせいで死んだ。か弱い幼児の死者数は、50万人にのぼった。

イラクに駐留している私の息子には、生後11ヶ月の赤ちゃんがいる。とてもかわいい。私は孫の顔を見るのが楽しみだ。自分の子供を何よりも愛することについては、諸君もイラク人も変わりがない。自分の息子や娘をなくしたイラク人たちは、50万人の幼児が死んだ原因が、アメリカ政府にあるということを、簡単には忘れないだろう。

だから、諸君がイラクで歓迎されるというのは、あからさまなうそだった。

ベトナムでもイラクでも、自分たちの家族を無残に殺され、財産を破壊され威信を傷つけられた人々は、侵略者を追い出そうとするのは当たり前だ。米兵は、生き延びるために、自分たちに向かってくる連中を殺さなくてはならない。こんな状況を作り出したのは、ワシントンにいながら、高級ワインとキャビアを楽しんでいる、5千ドルの背広を着た政治家たちなのだ。

私の経験からいうと、ベトナムで生き延びようと思ったら、残酷に振舞うしかないと考えるようになった。気が狂ったように家々に火をつけ、見境なしに銃をぶっ放せばいいんだとね。

自分の人間らしさを失って戦場で生き延びても、母国に帰ってからがまた苦しい。人間らしく生きられないのだ。戦友たちは酒やドラッグに溺れたり、精神病院に閉じ込められたりしている。自殺したり、家族や他人を傷つけたりするものもいる。私自身、いまでも毎日憤怒の中で生きている。

だから、私は諸君に言いたい。生き延びるために、やることはやる。しかし、人間らしさを手放さないでほしい。他の粗野な兵士のように、男らしくなくてもいい。怒りや興奮にまかせてめちゃくちゃな蛮行はしないでほしい。
(中略)

どうか、五体無事で帰ってきて欲しい。
どうか、正気のままで帰ってきて欲しい。
あなたを心から愛している人々が、ここにいるのだから。

そしてあなたが帰って来た時、愛する人の顔を真正面から見られる人間であって欲しい。
どうか、あなたの魂を、砂漠の砂の中に捨てないでおくれ。
どうか、人間らしさを手放さないでおくれ。



マイタウンUSA


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