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| 「欧州どまんなか」 October
26, 2004 |
奇妙な独日・師弟関係
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 | 美濃口 坦
ミノクチ・タン
1970年から京都ドイツ文化センター勤務。1974年ミュンヘンに移住。1980年から1991年まで書籍販売業。人生の大部分を通訳、翻訳、教師等で日銭を稼いで生きてきた「フリーター」先駆者。この数年来、日独のメディアに寄稿。訳書「比較行動学」(アイブル=アイベスフェルト) |
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ドイツで暮らし始めて、もう何年もたった頃だったと思う。一時帰国した私は、マスコミに就職した大学時代の同級生に会う。日本で話題になる外国はまず米国で、欧州ならフランスが一番目に来て、ドイツの影は薄いと彼は語った。いつまでもドイツ文学している私を、友人が憐れんでいるような気がした。
こんな昔のことが思い出されたのは、日本人がドイツについて抱くイメージのアンケート調査を読んだからである。ドイツ政府は自国のイメージアップのために、来年4月から「日本におけるドイツ」と名づけていろいろな催し物を実施をするという。
この調査によると、日本人の多くがドイツと聞くと「まじめで勤勉で信頼できる」と思うそうだ。ドイツは主要八カ国のなかで、一番好感をもたれている国である。ちなみに英、米、伊、仏、韓国、中国と続き、ロシアが一番好感をもたれていない。これほど私たちから好かれているというのに、ドイツは何が不満なのか。
あなたの職場にこんな彼がいないだろうか。あなたは彼に対して反発も魅力も感じない。また彼のことなど仕事の上で接触がないかぎり気にもかけない。或る日、誰かから彼に好感をおぼえるか、ときかれた。反感を覚えていないのであなたは肯定する。こうして彼は職場で好感度ナンバーワン。ドイツのイメージは、このような彼に近いかもしれない。
欧州のどの国に魅力を感じるかときかれると、フランスと回答する人が一番多くて、その次にイタリアと英国が来てドイツは4番目になる。またどの国を思い浮かべることが多いかという質問でも、ドイツは四番目である。昔友人が指摘した通りで、ドイツは日本であまり話題にならない国ということになる。女性や若い日本人を選ぶと、ドイツの存在感は更に希薄になる。
ドイツが女にもてない国なのは、今にはじまったことでない。私は前世紀70年代のはじめ、京都でドイツ語・ドイツ文化を普及する機関に勤務した。当時、近くに日仏学館があったが、路上で見かける若い女性のほとんどがそちらの建物の中に消えてった。
ドイツと聞くと、日本人の多くが、技術とか科学・医学とか、またお城とか音楽とかを連想するという。都会性、流行、オシャレ、ファッション、デザインとなると、日本人はフランスやイタリアを思い浮かべる。このイメージは日本で有名なドイツ・ブランドにも反映し、高性能な自動車であったり、長持ちするクマのぬいぐるみや機能的にできたお財布であったりする。
少し前フィッシャー外相は「正直にいえば、日本人が抱くこのようなドイツのイメージはかならすしも今のドイツではない」とイメージアップ・キャンペーンの必要を訴えた。このようなセリフを聞くと、私も正直にいえば、笑うしかない。
こんなドイツのイメージは、日本人だけでなく、多かれ少なかれ、欧州の隣国も、また世界中の人々が、(面白いことに)ドイツ国民自身もがもっているのではないのか。だから多くのドイツ人が、イタリア製やフランス製より自国の自動車のほうが丈夫だと思ったり、イタリアに魅力をおぼえてバカンスを過ごし、またパリを洗練され都会と感じる。とすると、ドイツについて、どうして日本人だけが世界中の人々とは別のイメージをもたなければいけないのか、私は昔から理解できないでいる。
明治の開国以来、日本はいろいろな点でドイツを模範にした。こうしてできあがった知日派ドイツ人と親独派日本人の師弟関係は1945年の敗戦後も継続する。これはどちらの国でもごく少数の人々が関係し、一般の人は関知しない。でも両国の関係に大きな影響を及ぼしてきたような気がする。
ドイツにも洗練されたデザインがある。キャンペーンまでしてそれを日本国民に伝える必要はない。日本で知っている人はすでに知っているからだ。イメージと現実が一致しないことは、古今東西、平凡な認識である。税金をつかってこんなあたりまえなことを日本人に教えたい衝動に駆られるのも、この奇妙な独日・師弟関係のためではないのか。
ドイツ語からの翻訳は読みづらいとよくいわれる。これも翻訳者がドイツに対して「仰げば尊し」になり、その挙句「子曰(のたま)わく」式の、読者に不親切な直訳になってしまったからではないのか。こうしてドイツは日本人からどんどん敬遠されるようになってしまった。
来年からはじまる「日本におけるドイツ」も直訳で、聞いた日本人が眼を白黒させるという。どう考えても私には今までの日独関係の延長上にあるような気がしてしかたがない。
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