| 矢部 万紀子の「代理心得堂」 December
22, 2004 |
松本清張傑作短編コレクション
宮部みゆき責任編集
文春文庫 上・中・下 定価700円(税込み) |
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矢部 万紀子
ヤベ・マキコ
学芸部、AERA、週刊朝日、uno!の記者、AERA副編集長を経て、週刊朝日副編集長。週刊朝日時代に、松本人志「遺書」「松本」などの連載を担当。 |
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こんにちは。高村薫派の矢部です。
それにしても映画「レディ・ジョーカー」。どうせがっかりするだろうなー、とは思っていた。だが、合田刑事が「21世紀の裕次郎」とは、いくらなんでもどうだろう。うっそーーん。これじゃあ、見るまでもない。超超がっかり。白いスニーカー履いてたらなんでもいいと思ってるのかなあ、東映の人は。違ーう。見に行かないから、いいですけどね。
と、なんで徳重聡くん(が「21世紀の裕次郎」)への不平・不満を今回の前口上に使ったかというと、宮部みゆきさんです。わたしはこの「代理心得堂」において、高村ラブだと書きまくり、「宮部みゆきはダメなの」などと書いてきた。今もその、好き嫌い光線については変化なしなのだけど、この『松本清張傑作短編コレクション』を読んで、だいぶ思いました。「宮部さんって、すごいな」って。
「当たり前じゃー」と、全国1000万人宮部ファン(推定)の怒声が聞こえますが、宮部ミステリーの「情念のなさ」みたいなものを感じてしまいがちだったのです。ですが、この本の章ごとについている彼女の「前口上」を読み、作品の選び方などもあわせて、「勉強家なんだろうなあとは思ってたけど、ちょっとやそっとじゃない勉強家でいらっしゃるな」と感服したしだい。
これだけ松本作品を読み、血とし肉とするって、並大抵じゃないなあなどという43歳(と11カ月)には思えないお子ちゃまな感想しか書けないヤツに、宮部さんも言われたくないだろうなあ、と思いつつ彼女の話はこれくらいに。
この本を読み、松本清張への印象もすごく変わった。
わたしと清張作品の出会いは、確か小学校6年か中1のときの「砂の器」だ。その後、評判の高かった映画を見たが、そちらは「原作のほうが100万倍おもしろいじゃないか」と思った我が人生の第一弾だったと思う(あー、それにしても「レディ・ジョーカー」、しくしく)。そのあと「ゼロの焦点」とか「点と線」とかを高校生くらいまでに数点読んだ。つまり子どもの頃にがんばって読んだ作家だった。
それがこの年になって読んでみると、男を見る目、女を見る目、成功者を見る目、落伍者を見る目……それがいちいち確かなのだ。今でも全然古くない。もちろん、「そうでしてよ」的な言葉の古さはあるのだが、視線はまるで今なのだ。松本清張という人がエリートでないというのは、広く知られた話だと思うが、それだけでなくマッチョじゃない。そこがすばらしい。
現在、中巻の307ページまで読み終わった(読了してないってことです、すいません)のだが、上巻の「真贋の森」の「大ボスににらまれたばっかりに一生をほぼ棒にふり、自分よりバカで才能のないヤツがエラくなってることを時々思い出して、怒りをわき上がらせている男」の野望の顛末は、「こりゃ、たまらんなー」だった。「地方紙を買う女」は、テレビのサスペンスものの定番中の定番「海辺の断崖絶壁で犯罪を告白する告白する」の原型っていうか、だいぶ違うけど、でも最後のカタルシスみたいなものの原型はこれなのかなあ、と思った。中巻の「式場の微笑」も、今でもまったく通用する「にやり、どきり」な話で、それが「にやにや」じゃないところが品位であって、松本清張ならびに時代にそれがあったのだと思った。
最後に一言。初出が必ず文末に入っている。我が職場である「週刊朝日」がけっこうある。えっへん。
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