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| 砂山清の「地球ワンカット」 December
11, 2003 |
「すべては愛のために」の真似の出来ない偉さ
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 | 砂山 清
スナヤマ・キヨシ
朝日新聞記者、「AERA」スタッフライター、テレビ朝日系「キッズニュース」キャスターなどを経て、現在フリー。日本旅行作家協会、日本映画ペンクラブ会員。 |
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|バックナンバー|
石井晃の「スポーツ・ジャーナル」
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NGO団体ピースウィンズ・ジャパンの大西代表が、TVで言っていたことに、深く納得した。彼は、もし日本の自衛隊が、イラクでやろうとしている事を、民間(NGO)がやったら、恐らく10分の1の費用で出来る、というのである。だから、単にイラク人たちの戦後復興を助けるという目的だけで自衛隊が行くのなら、またもや国民の税金の無駄遣いということになる。もちろん自衛隊が行くのは、イラク人のためだけでなく、日本政府が米国政府に恩を売っておく政治パフォーマンスの狙いもあるわけだから、コストパフォーマンスに合うか合わぬかは、単純にNGOとの比較だけで決められないのだろうが。
それにしても、危険だから、行くの行かないのと、武装グループである自衛隊が、逡巡している間に、民間のNGOは、イラクのあちこちに入り込み、難民の救援など様々な活動をしてきた、というのには、考えて見れば当然のことなのだろうが、改めて驚嘆させられる。国会で続いてきた議論って一体何なのだろうか。(誤解されては困るのだが、僕は自衛隊派遣に賛成して言っているのではない。全く逆である。そもそも、この正義のない一方的な侵攻破壊の戦争には、初めから反対で、そのためのデモにもいったくらいなんだから)。
僕が、言いたいのは、戦争や飢餓などで苦しむ「この世の地獄」のような世界の各地に出かけて、献身的に救助活動にあたっている、日本だけでなく世界中のボランティアの人たちの、心と肉体に、心の底から賛嘆を捧げるという事だ。一体何故、彼ら(彼女ら)は、あんなことができるのかしら?と、自分との違いを改めて噛みしめる。
僕も、会社を定年になり暇なのだから、こんな文章を書いてないで、彼らを少し見習ったらどう? と、自分自身に自分で言うのだが、とても、とても。寄付だって、しないのだから。
この気持ちは、近く公開されるマーティン・キャンベル監督の米国映画「すべては愛のために」を見て、気恥ずかしさや後ろめたさを通り越し、ああ、俺って、もともとそんなことの出来る人間じゃないんだ、という、絶望的確信に変わってしまった。
この作品は、飢餓と内戦に苦しんできたエチオピア、恐怖の独裁政権や内戦で多くの国民が虐殺されたカンボジア、ロシアとの紛争がいまも続くチェチェンを舞台にした、国際ボランティアの壮絶な活動を、一組の男女の、結局実らず終わる切ない愛を絡ませて描いている。
こういうテーマを娯楽色いっぱいに描く姿勢、それをヌクヌクと見に行く自分に、例によって自己嫌悪を覚えながら見に出かけたのだが、見終わって、大げさに言えば、僕の世界観は、遅まきに、何だか1ページめくれたように感じた。
その後見たTVでのピースウィンズの大西氏の発言に、深く納得するのも、その為かも知れない。とにかく、世界中に、信じられないほどの、献身的ボランティアたちが、わが身の危険を顧みずに苛酷な条件の中で、今日も活動しているのだ。そのエネルギーに、ただただ圧倒される。
主人公の若い女性サラは、ロンドンで大金持ちの義父が開いた、難民救済の慈善パーティで、一人の青年に出会う。彼は、ボランティア先のエチオピアから、やせこけた少年を連れ込んだ。そして「旨いものを食って、こんなところでパーティを開いている間に、世界中で大勢の子供たちが、餓死しているんだぞ」と、場違いに叫び、警備員につまみ出される。しかし、サラは、その姿を見て、心の中に何かが起き、止まらなくなる。翌日、ロンドンの寒さの中で、その少年が青年とはぐれ死んだという、ニュースを見て、それは確信に変わる。夫との幸せな生活を捨て、青年を追い、エチオピアに渡る。
初めは、お金持ちの若い奥様の気まぐれ、と相手にしなかった青年は、彼女の、現地人の赤ん坊の小さな生命への優しさとひたむきさに魅かれて行く。しかし、ボランティアの活動は、恋愛など許されないほど、緊迫している。水を高く売って儲けるため水道工事を引き延ばしている役人に、抗議したのがもとで、青年たちの難民キャンプは、強制的に閉鎖される。
カンボジアでも、対立する両方の軍隊が、唯でさえ不足している救援物資のワクチンを乱暴に投げ飛ばしたり、母親から奪い取った赤ん坊に手榴弾を持たせ盾に使ったりする。その中を、青年とサラたちは、精魂をすり減らしながら、命がけで医薬品を難民キャンプに届ける。しかしついにボランティアの仲間が殺される。
極寒のチェチェンでは、ゲリラの人質にとられ、空爆下、地雷原のなかを逃げ回る。そして、ついに悲劇が……。シューマンの「トロイメライ」が、悲恋を効果的に盛り上げる。
娯楽作品には仕上がっているが、ここに語られる挿話や、現地の雰囲気は、実話に近いという。
サラを演じたアンジェリーナ・ジョリーは、この映画がきっかけで、自らも難民のためのボランティア活動に乗り出し、難民キャンプを回ったり、多額の寄付をし、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の親善大使にも就任。カンボジア難民の子供を養子にして我子として育てるなどの活動をしているという。
映画の中でも、さんざん語られているように、センチメンタリズムやロマンティズムだけでは、出来ない苛酷な人生である。
訂正:前回の「地球ワンポイント」のタイトルにある、「美しい夏のキリシマ」を「美しい夏キリシマ」に訂正します。
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