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日本@世界
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船橋洋一
本社コラムニスト
船橋洋一
船橋洋一
 
「性格の不一致」摩擦

 青銅色の波が至る所、白く裂け、鉛色の空へ飛翔(ひしょう)する。ボートが転覆している。すさまじい強風に、ホテルから隣の会議場まで歩くのもままならないほどだ。

 レマン湖のほとりのパレ・ウィルソンの国連人権委員会本部で開かれた国際会議に出席した。世界の紛争予防を話し合うためだが、コーヒーブレークでは米大統領選挙後の欧米関係をめぐって話が弾んだ。英米首脳会談後、ブッシュ米大統領が「2期目は、欧州諸国と一緒に大西洋関係を深めるように努めていきたい」と述べたばかりだ。

 「2人とも赤いネクタイで記者団の前に出てきた。ともに原色を好む。勧善懲悪の原色だ。欧州サミットでは指導者はもっとパステル色かくすんだ色のタイが多いように思う。欧米は今後も大変だ。いまは勝利の美酒に酔いしれている時だからブッシュも鷹揚(おうよう)なところを見せているが」(スイス外交官)

 「どうかな。欧州の政治指導者の多くはケリー期待を言いながら、内心は彼が選ばれた場合は、自分たちの責任が重くなるので困るなとも思っていたのではないか。ブッシュなら反対を繰り返していればよかったからね。もう彼と話すしかないのだから、欧州も覚悟を決めないと」(ベルギー元首相)

 「こうなると、欧州は、外交、安全保障でも欧州統合をもっと深めていく以外ない。今回の選挙のように米国の政治が宗教色を強め、国家と宗教の垣根がぼやけてくるようだと、米国に対する違和感がさらに強まっていくだろう。英国でさえいよいよ本気で欧州統合に向かうのではないか。あの国ほど伝道師的政治を嫌う国もないからね」(フィンランド元外相)

 イラクもさることながら、イランの核開発問題がまずは欧米関係出直しを占う試金石となる。ここでは英仏独の3カ国がイランと核廃棄交渉を続けてきたが、米国内には対イラン強硬論が強い。欧米が共同歩調を取らなければ、核問題の解決はおぼつかない。戦争に勝つには米国単独でもできる。しかし、平和に勝つには米国の友好国、同盟国との共同作業がいる。イラクで経験済みのことだ。

 欧米関係の緊張は冷戦後、高まったが、決定的に悪化したのは、911テロからイラク戦争へと対テロ戦線が拡大する中でのことである。

 以前なら考えにくいことが次々と起こった。

 ▽ドイツの現職首相が反米を掲げ、総選挙に勝った。

 ▽ドイツは従来の米仏間の摩擦の仲介役をやめ、仏と組んで米国に対抗した。

 ▽独仏のイラク戦争反対陣営にロシアも加わった。

 ▽米国が、「古い欧州」と「新しい欧州」へと欧州分断を露骨に図った。

 ▽「下からの反米」が政権の対米支持を覆すケース(例えば、スペイン)が生まれた。

 その根っこには、脅威感をめぐる欧米間の違いがあり、世界秩序観の対立がある。体制転換、先制攻撃、多角主義、多極化など、両者の間で鋭く意見が対立する争点は、いずれもそこから枝分かれしてくる。

 会議では、イスラムとの共存が大きなテーマとなった。その関連で、オランダで起こったムスリム過激派によるテロ事件が取り上げられた。それがこの寛容な社会を大きく変えようとしているのではないか、問題はイスラム人口を統合できない欧州にもあるのではないか、テロに対して開かれた社会をどのように守ったらいいのか……。

 前回、ジュネーブを訪れたのは折しも、2001年9月11日だった。夜通し、ホテルのテレビの前に座っていた。

 あれから3年。世界の何が、一番変わったのだろうか。「アラファトの死」のテレビ報道を部屋で見ながら、考えた。

 〈政治が恐怖によって突き動かされていく。その恐怖の対象がテロリズムという抽象へと還元されていく。恐怖から逃れるため、価値とか宗教が希求されていく。かくして抽象と抽象の戦いが生まれる。相手が「何をするか」(政策)より相手が「何であるか」(存在)に批判と憎悪の矛先が向かう〉

 平たく言うと、「意見の不一致」ではなく「性格の不一致」と言うことだ。その現象が世界大で起きているのだ。宗教や民族や人種で人間の属性もプロフィルも決めつけ、その社会や国が好きか嫌いかを決めてしまう。

 欧米のいさかいも、お互いの「性格の不一致」からなのか。それとも開かれた社会の不確実性ともろさも含めた、似たもの同士故なのか。その相互の可能性と脆弱(ぜいじゃく)性を的確に認識し合うことから、欧米の真の対話も始まるのだろう。 (2004/11/18)








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