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日本@世界
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船橋洋一
本社コラムニスト
船橋洋一
船橋洋一
 
六ケ所村再処理は凍結を

 国際原子力機関(IAEA)の定例理事会は11月29日、イランにウラン濃縮活動の停止継続を求める非難決議を採択した。決議は、イランがウラン濃縮活動の一時停止に踏み切ったことを歓迎する一方、昨年10月まで、ウラン濃縮やプルトニウム抽出など核不拡散を定めた保障措置協定違反を重ねたことに「強い懸念」を表明した。

 これによってイランの核危機はひとまず回避されたが、「一時」が過ぎれば、危機が再燃する恐れが強い。

 イランは最後まで、核不拡散条約(NPT)で認められている「平和利用の権利」を主張し、ウラン濃縮施設についてはカメラ監視は受け入れたものの、封印は拒否した。

 理事の一人は、「これまででもっとも難しいケース」と述懐した。NPTは、署名国に核の平和利用の「奪い得ない」権利を認めている(第4条)。イランはNPT違反をしたわけではない。しかし、このままではイランは着実に核能力を高めるだろう。NPT体制の根本矛盾が露呈した形だ。

 今にして思えば、NPTの「無期限延長」を決めた95年あたりが、体制の絶頂だったかもしれない。その後、98年のインド、パキスタンの核実験、01年の9・11テロ、今年のパキスタンのカーン博士を中心とする核闇市場摘発と激震が続き、体制はひび割れた。

 各方面から、NPT改善案が唱えられている。

 ▽不拡散規則を政府だけでなく個人と企業にも適用する。

 ▽平和利用の権利を見直す。とくに、高濃縮ウランは平和利用も禁止する。

 ▽闇市場での核技術取得、売却を非合法化する。

 しかし、いずれも実現は難しい。

 イランは自らの核燃料サイクルを弁護するに当たって「日本には許されているのになぜ、イランには認められないのか」と問題提起したという。現在、非核保有国の中で日本だけが大規模な再処理によってプルトニウムを抽出しようとしている。

 日本とイランは違う。だいいち、日本は産油国ではない。中国、インドの石油・ガス需要の爆発的増大と地球温暖化の中で、原発は今後、さらに重要になるだろう。従って、核燃料体制も強化しなくてはならない。

 日本は内閣・原子力委員会がこのほど「従来の核燃料サイクルを維持する」との結論を打ち出した。青森県六ケ所村の再処理工場の運転開始にお墨付きを与えたわけだ。しかし、従来の再処理したプルトニウムを高速増殖炉で「燃やしながら増やす」核燃料サイクルは、経済性の欠如と事故で挫折状態にある。

 六ケ所では来年中にも、本物の使用済み燃料を使った試験が行われる予定だ。しかし、それが始まれば、世界の目は険しくなるだろう。

 すでに日本の非核三原則とガラス張りの核物質査察にもかかわらず、日本はプルトニウムを大量に有している。Rokkashoは日本「特別扱い」の象徴的存在として批判の対象になりかねない。イランや北朝鮮などの「核疑惑国」に要らぬ口実を与える恐れも強い。

 次に、イランなどの濃縮ウラン計画の平和利用の保証としてIAEAが検討しつつある核燃料用物質製造の主体の多角化と国際化に水を差しかねない。

 小泉首相は9月の国連総会の演説で「唯一の被爆国」である日本の経験を踏まえ、「先頭に立って核軍縮・不拡散の促進に努めて」いくと述べ、国連安保理常任理事国入りへの意欲を示した。核保有国のP5(常任理事国)とは違う、日本ならではの使命と役割を指し示したものだ。

 その意気やよし。しかし、「唯一の被爆国」と「唯一の非核プルトニウム大国」の間のギャップが、日本のあいまいさとして世界に投影され、日本への警戒感を生みだしていることに、日本はもっと敏感にならなければならない。日本の核燃料政策に欠けているのは、外交と安全保障、とくに世界の不拡散と東アジアの軍備管理・軍縮の観点からの位置づけである。

 日本は国内の核燃料体制と核不拡散外交のあり方を再検討する時だ。来年のNPT再検討会議をその理念を肉付けするまたとない舞台ととらえる。中でも次の3点の可能性を追求する。

 ▽六ケ所村の運営を将来、多角化、国際化の枠組みに置く。

 ▽中国、韓国、ロシアはじめ近隣諸国と、地域の安定と平和を促進する形での原子力利用のあり方を協議する。

 ▽あわせて、核保有国に核軍縮への本格的取り組みを促す。

 そうした不拡散「先頭外交」を推進するためにも、日本は六ケ所村計画を一時凍結するのがよい。

(2004/12/02)








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