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早野透
本社コラムニスト
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所信表明演説のミステリー

 自民党の武部勤幹事長がおせっかいに「ブッシュ大統領でないと困る」と言ったり、町村外相が「操縦が上手だったから最小の被害にとどまった」と沖縄米軍ヘリ事故を評したり、何だか危なっかしい発言が続く。ともあれ小泉新体制がスタートした。

 こんどの独走小泉流サプライズ人事には小泉首相の後見人、森喜朗前首相が「きわめて不愉快である」などと言って驚かせたが、実は派閥会長を辞めるとまで怒っていたという話を聞いた。不穏な火種は消えたのかどうか。

 サプライズの次はミステリーが来た。臨時国会の冒頭からもめているのが旧橋本派の1億円事件である。「私は新聞で初めて知った。おやおやこんなことがあったのかと不思議に思った」という村岡兼造前衆院議員が起訴されてしまった。テレビでとつとつと無実を語る村岡氏の語り口は隠しているとは思われず、こりゃ不思議だな。

 1億円小切手を受け取った現場にいたとされる橋本元首相、青木幹雄参院会長が不起訴、野中広務元自民党幹事長が起訴猶予で、つゆ知らなかったという村岡氏が起訴では「仕組まれた」と思うのは不思議ではない。こんなミステリーを解かずに、小泉さんも所信表明演説で「政は正なり」などと納まっている場合ではない。国会が証人喚問するのは当然のことだ。

 ミステリーといえば、ちょうど来日したアーミテージ米国務副長官は小泉さんの所信表明演説そのものを不思議だと思ったらしいよ、とある政治家から聞いた。

 演説では、外交方針の第1に日米同盟と国際協調をあげた。これは不思議ではない。第2に常任理事国入りをあげている。これもよかろう。ただし、それを実現するには中国が拒否権を使わないようにさせなければならない。では日本はどんな対中政策を打ち出しているのか、第3に中国が登場するとアーミテージ氏は思ったらしい。

 しかし演説は、米軍再編、北朝鮮、イラク、ロシアと続いて中国は出てこない。やっとそのあとに「先週、ハノイで開催されたASEM(アジア欧州会議)首脳会合に出席しましたが、中国、韓国を始めとしたアジアや欧州の国々と交流を深め友好信頼関係を強化してまいります」と、何とそれだけである。

 むろん靖国神社参拝が理由だろう、そのASEMで「忙しい」とかいわれて、小泉さんは日中首脳会談をそでにされた。それなのにアジア、欧州といっしょくたに「友好強化」なんてことで済ませていいのか。常任理事国入りと対中関係の間に、外交目標としての戦略性がないというのがアーミテージ氏にとってのミステリーらしい。

 小泉さんの参拝で日中がこじれている間に、フランスのシラク大統領、ロシアのプーチン大統領が次々と北京を訪れた。シラク氏は新幹線や飛行機を売り込み、プーチン氏は国境紛争を片づけ石油や天然ガスの取引を拡大させる。どちらも「中国市場」を戦略目標にしている。欲得ずくでバスに乗り遅れるなとはいわないけれども、どう考えても3年も日中首脳交流が途絶えているのは損である。

 私はそもそも中国侵略の歴史を思えば靖国参拝はやめた方がいいと思うけれども、いま歴史のことはあえて言うまい。小泉さんが戦死者に涙する気持ちもよくわかる。しかし、それはもうわかった。そろそろ小泉さんの心情でなく一国の指導者としての見識を持つべきではないか。

 と書いているところに、18日の衆院予算委員会で自民党の伊藤公介議員から同じ心配をする質問が出て小泉さんはこう答えた。

 「中国が愉快でないことは承知しているが、よその国が死者への慰霊の仕方がよろしくないと言うからといって引き下がっていいものか」

 相手がやいやい言うからこちらも引き下がらないんだという気分があるなら、どうもそれは「匹夫の勇」に思えてならない。中国が問題視しているのはA級戦犯合祀(ごうし)の一点である。違った価値観を調整するのが外交であるはずである。もう少し戦略性のある外交を構想する懐の深さが総理大臣にはあっていい。

 このままでは小泉さん自身がミステリーになる。

(2004/10/19)








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