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早野透
本社コラムニスト
早野透
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日本の山が腐っている!

 ことしは浅間山が噴火し、台風が襲来し、大地震が起きた。イラクの戦火をはじめ世の心配はつきないけれども、それ以前に、人間と自然の関係に赤信号を感ずる。

 10月21日の参院予算委員会で民主党の前田武志氏が「去年は冷夏、今年は酷暑、台風が10も上陸、里にクマがどんどん出てくる。国民も異常気象を感じている」と天地異変を取り上げた。

 「山が荒れている。人工林が間伐されずに放置され、野生動物の食物が茂らない真っ暗な森林が増加している。いま山が腐っている」

 国土の専門家で知られる前田氏の言だから小泉首相らもまじめに耳を傾けた。

 私はひょんなきっかけで誘われて「日本の森を育てる木づかい円卓会議」(議長、川井秀一京大生存圏研究所教授=日本木材学会会長)に名を連ねて、半年にわたる議論の中でさまざま学んだ。そこで私も感じた。

 山が腐っている!

 そもそも日本は木の国だった。森で炭を焼き、森から切り出した木で家をつくった。戦後復興から高度成長期にかけて人工林を造成した。70年に木材の総需要は1億立方メートルに達して自給率45%だったのに、次第に住宅は洋風になって需要は2割ほど減り、安い外材輸入が増え自給率は20%を切るようになる。

 「森を育てるには、苗木の周りの草刈り、つる切り、除伐、枝打ちと手入れする。25年もすると木が大きくなって林が込み合ってくる。そこで間伐(間引き)するんです。すると地面に日光が差し込んで下草が生え、昆虫や鳥が生息するようになる。木も根がしっかりして土砂崩れを防ぐ強い森になる」

 「でも日本の山は斜面が急で木材の大規模生産ができない。で、外材に押され日本の森は間伐も進まずに荒れ放題になっているんです。間伐材だって家具、カートカン(紙製飲料缶)や割(わ)り箸(ばし)、内装材や合板など使い道がある。ちょっと高くても日本の木を使いたい。間伐材を使うことから始められないか」

 円卓会議で林学者たちは心配する。しかし産業界の代表は苦渋を述べる。

 「コンビニ大手3社で年間16億本(30億円相当)の割り箸をサービスで提供しているが、ほとんどが中国からの輸入品です。コンビニ商品は環境に優しいというだけでは簡単ではない。しかし何とか心地よさ、心温まる商品の提供も進めたい」(コンビニ会社取締役)

 「ハイブリッド車は新しい価値創造です。米国人は環境意識が高くよく売れている。経済性と性能とエコのバランス、消費の意識変換が大事と思う」(自動車会社専務)

 経済人も環境を大事にしたいと思い始めているんだね。問題はちょっと高くても環境にいいものを選びたいという消費者意識が育つかどうか。それが国産材を使おうということに結びつくかどうか。そして天然林も大事にし人工林も育てて、日本の森を人間も動物も住みやすい共存空間にできるかどうか。

 国会での前田氏の質問に小泉首相はこう答えた。

 「車道と歩道を分けるガードレール、わざわざ木の形、木の色にしているんです。よく見るとコンクリート。こういうのは直した方がいいんじゃないか。京都議定書の目標達成のためにも森の育成はほんとに大切だ。温暖化によってカメの卵、ワニの卵も雄雌が変わるなんて私、知らなかったんですよ」

 円卓会議は15日、「木づかいのススメ」という提言を発表した。メンバーの阿川佐和子さんは木製ガードレールを勧めていたな。私は、美空ひばりの「1本の鉛筆」にならって「1本の割り箸」という歌詞をつくって恥ずかしながら披露した。

 1本の割り箸が中国からやってくる

 中国の森を壊している

 中国のはげ山から黄砂が飛んでくる

 1本の割り箸を日本の木でつくる

 これまで捨ててきた間伐材でつくる

 森の風通しがよくなって日本の森が生き返る

 土砂崩れから村を守る

 「1本の割り箸」から気持ちを変えたい。だれか曲をつけてくれないかな。 (2004/11/23)








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