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ポリティカにっぽん
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早野透
本社コラムニスト
早野透
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法の支配のアンバランス

 一時期は龍様などといわれて人気を博した総理大臣がいまや「あれで一国の総理大臣だったんですかねえ」などと、ちまたのひんしゅくを買っている。橋本龍太郎氏の衆院政治倫理審査会の一幕はかくも情けなかった。

 1億円の小切手を貰(もら)ったのか貰っていないのか、みんなが貰ったというから貰ったんだろうなどという言い草はなんとも妙だ。そもそもこの種の弁明を非公開の席ですませるなんて男がすたる。政治倫理の問題は「公開」でなければ信用性がない。

 2日午後、国会近くで開いたジャーナリスト主催「政治とカネ」シンポに鈴木宗男氏が出てきた。私は400万円で捕まったけれど、1億円貰ってもおとがめなし、事務責任者だけ捕まるのはおかしいですねえ、という鈴木氏の疑問はわからないではない。日本歯科医師連盟からの1億円は単に帳簿に載せなかったという形式犯ではない、怪しいニオイがぷんぷんする。

 橋本氏と鈴木氏の境遇の差だけではない、いまさら言っても始まらないが辻元清美さんがやり玉にあげられた秘書給与事件も不均衡甚だしいものだった。その後、自宅のお手伝いさんに秘書給与を払っていたという女性閣僚がいたが、何だか訳のわからぬ弁明でうやむやになっている。警察の裏金作りはどうなのか。秋霜烈日、検察の正義はあてになるのかどうか。

 もうひとつ、これはどうかと気に掛かっているのが衆院宮城1区と2区の選挙違反事件である。

 1区の民主党候補者今野東氏、2区は鎌田さゆり氏。2人を支援するNTT労組などの幹部がNTT系人材派遣会社に80万円とか50万円とかを支払って電話作戦を依頼したとかで、それが公選法の「利害誘導罪」にあたるとして逮捕、起訴された。

 確かに「○○さんに投票してください」と電話で頼む人はボランティアであるべきであってお金を払ってはいけないことになっている。一審で検察側は「金銭を支払う電話作戦は金で投票を買おうとしたものにほかならない」と主張、判決は労組幹部に対し懲役刑で執行猶予、二審もこれを支持した。

 だが、これにはいくつもの問題点がある。例えば「○○さんをお願いしまーす」と呼びかけるウグイス嬢には、いわば単純労務としてバイト代を払っていいことになっている。それと人材派遣で来て電話掛けをする人の間に差があるのか、選挙運動規制がそもそもわかりにくい。

 「利害誘導罪」をあてはめるのが正しいのかどうかも争点になっている。

 何よりも首をかしげるのは候補者がまったくあずかり知らぬところで起きたのに、この事件が禁固刑以上で確定すると、その被告人が組織的選挙運動管理者と認められれば議員に連座制が適用されて当選無効になることである。まもなく最高裁の判断が出ればそういう段階になる。

 かつて金権選挙はけしからん、選挙違反の取り締まりと言ったって下っ端ばかりがつかまって議員だけぬくぬくと生き残るのはおかしいという世論が澎湃(ほうはい)と起こって、連座制が強められてきた。候補者がもっと目配りすべきだ、労組幹部であれば選挙のプロなのに不注意もはなはだしいという意見もあるだろう。

 だが、自民党でも「電話掛けの報酬は認める」法改正の検討に入っている。さすがに連座制の要件としてはきつすぎないかということだ。

 法律のミクロの目でなく昨今の政治全体の現実を見てごらん。

 一方で、1億円の小切手をポケットに入れて何のおとがめもない。それ以外に、日本歯科医師連盟から国民政治協会を迂回(うかい)した怪しい献金も各方面に流れていたらしい。それこそ「金で政策を買う」振る舞いが横行しているかのようなのに、小泉さんは「迂回献金はない」の一言で片づけておしまいである。

 その一方で、数十万円の電話掛けのバイト代を「金で投票を買おうとした」と問われて、議員2人のクビが飛ぶことにもなる。何か違うのではないか。

 「法の支配」には異存はない。しかし、そのアンバランスな適用がやたら目立って、いたたまれない。

(2004/12/07)








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