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ポリティカにっぽん
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早野透
本社コラムニスト
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世論調査の数字の我田引水

 12月14日以降もイラクへの自衛隊派遣を延長するかどうか、さきの臨時国会で小泉首相は、いかにサマワのあるムサンナ州の住民が自衛隊を歓迎しているかを数字をあげて説明した。

 引用したのは、朝日新聞とイラクの地元紙ウルクとの共同世論調査で「自衛隊駐留を支持する」が84%もあったという数字である。こんなに歓迎されているのだから派遣延長していいだろうと言いたかったのだろう。12日のテレビで元防衛庁長官の中谷元氏も同じ数字を引用した。

 サマワの自衛隊が歓迎されているのはうれしいが、考えてみれば給水したり学校を修理したりして奮戦しているのだから、当地で歓迎されるのは当然といえば当然だろう。小泉さんが世論調査を引用するならば、一方で、日本国民の62%が派遣延長に反対という数字も気にとめてもらいたかった。

 この数字には、サマワの自衛隊もがんばっているけど、治安も心配、アメリカに対する協力もこのへんで十分じゃないか、大量破壊兵器がなかったという話もひどいね、万一のことが起きないうちに引き揚げてきてもらおうよ、といった様々な思いが込められていると思われる。

 けれどもこっちの数字は、小泉さんが時々言う「世論もいつも正しいわけではない」ということらしく、あまり尊重されていない。というわけで、毎日新聞調査では「首相説明は不十分」が84%に達しながら、小泉さんは派遣延長を決定した。

 世論調査は、聞き方によって、聞く相手によって、聞くタイミングによって変わってくる。それをきちんと把握して政治に役立てるのは重要だが、政治が自分の都合のいいところだけを引用する我田引水、いや我田引用は困る。大切なのは、政治の姿勢、政治の決定に理が通っているかどうかということである。

 8日、北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの遺骨なるものは偽物であることがわかった。北朝鮮に対し「経済制裁すべし」という意見は、11月末の朝日新聞調査で65%、12日に報じられた毎日新聞調査では72%に達した。

 まったく北朝鮮という国はこんなにもひどいウソをつく国なのか、日本国民の気持ちが経済制裁に傾くのは自然である。しかし、イラク問題で世論と違う「首相の判断」をした小泉さんだから、北朝鮮問題では世論に従って「よし経済制裁だ」などということはないだろう。であれば小泉首相はどうすべきか。

 ここはやはり経済制裁の有効性、利害得失を冷静にとことん考えてほしい。言うまでもなく経済制裁は仇討(あだう)ちではなく、北朝鮮に反省と翻意を強いるためである。この時点で、経済制裁に踏み切るのは日朝交渉のあり方を基本的に変えることになる。時の勢いではなく、そこに理と利があるかどうか、重大な戦略的判断の場面である。

 世論調査といえば、このごろは憲法改正を求める人が6割というのが通り相場だ。しかし、その中身はどんなものか、いま与党で進んでいるような改憲プロセスを望んでいるのかどうか。

 くだんの中谷元氏は自民党憲法改正案起草委員長でもあり、中谷氏の依頼で陸上自衛隊の幹部が改憲案をつくって提出した。そこには、軍隊設置、国民の国防義務、集団的自衛権の行使、国家緊急事態の布告などが盛り込まれているという話で、中谷氏も自衛官出身、まるで戦前の陸軍の「国家改造」を思わせるような逸脱行為である。

 そもそも憲法の全面書き換えなどを国民が望んでいるのか。世論調査で6割賛成という数字の勢いで、こんなおどろおどろしい憲法改正の作文をしてくださるな。改憲といってもみんなの脳裏にあるのは、せいぜい自衛隊の存在を定め、環境権を盛り込んで、私学助成を認めるぐらいのところではないか。

 ただし憲法改正には、衆参両院それぞれの3分の2の賛成を得て発議し、国民投票の過半数の賛成で初めて改正できるという定めがある。改憲案全体に○×をつけるのか、1条ごとの改正に○×をつけるのか、どんな形の国民投票になるのか、来年の通常国会の国民投票法案をめぐる攻防が重要である。

(2004/12/14)








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