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小原篤のアニマゲ丼

ハハッ、ロリコンだぁ!

2008年05月05日

 あれは私が中2か中3のころ。学校の廊下でO君がすれ違いざまに尋ねました。

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「ルパン三世 カリオストロの城」はウォルトディズニースタジオホームエンターテイメントからDVDが発売中

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初めて「カリ城」を見たとき並映されていたのが「007 ユア・アイズ・オンリー」(DVDは20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパンから)。カーチェースが「カリ城」の影響を受けていたことを、当時は気づかず、今頃になって知りました

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私の愛聴版「ルパン三世 ’71 ME TRACKS」(バップ)。ファースト・ルパンのオリジナルBGMを本来の姿で収録

 「ねえ、『カリオストロの城』好きなんだって?」

 「え? うん」

 「ハハッ、ロリコンだぁ!」

 ポカンとする私を置いて、O君は笑いながら走り去っていきました。

 おそらくアニメ誌あたりでこの作品のヒロイン、クラリスが「ロリコンキャラ」としてもてはやされているのを見たか何かしたのでしょう。だが、当時の私はアニメ誌など読んでいませんでしたから、そんなことは知りません。「ロリコンてのはオジサンを指していう言葉じゃねーのか。じゃ何か、オレが同い年の女の子を好きになったらロリコンか?」などとひとりごちて、反対方向に歩いていきました。「萌えアニメ」があふれかえる今から見たら大昔の、牧歌的なお話です。

 当時も今も、「ルパン三世 カリオストロの城」(79年、宮崎駿監督)は大好きな映画です。思えばこの「ロリコン事件」(ヤな名前)の数ヶ月前、洋ものポルノと普通の映画をとっかえひっかえ掛けていた都内のある名画座で「カリ城」を見て、熱に浮かされたようになったことが分岐点となって、私の人生コッチへ来ちゃったんだなあ、としみじみ思います。その時の気分というか決意のようなものを文字にすると、「魂の半分は、美しい虚構の国に置いておこう」といったところでしょうか。

 その「カリ城」の「初のHDリマスター版」が、5月2日に日本テレビ系で放映されました。いやあ、やっぱりハイビジョンはいい!(前回のネタの続き) 早くブルーレイディスクにならないかなあ。

 偽札作りを営むカリオストロ公国に乗り込んだルパンが、大公息女クラリスを、摂政カリオストロ伯爵の魔の手から守ろうと闘う物語。「ルパンは何をするつもりで公国に来たのか」「伯爵は何を目論んでクラリスと結婚することにしたのか(ロリコンだから?)」、昔も今もよく分かりませんが、それでも面白いものは面白いです。悪漢がお姫様を狙うのにも、お城からお姫様を救い出すのにも、理屈は要らないということでしょう。「ルパン」がこれからどれだけ作られようとも、私にとって「ルパン」の最終回は、クラリスに粋な別れを告げてルパンや銭形が去っていくあのラストシーンに決まっています。

 ちなみに、春からフジテレビ系で深夜に放映が始まった「二十面相の娘」は、二十面相と行動を共にする少女が主人公です。原作マンガを読んだ時にはうかつにも気づきませんでしたが、アニメを見ていると「これは、ルパンについて行ってドロボウの仲間になったクラリスでは?」という思いを禁じ得ません。監督とメカデザイナーが「カリ城」で腕を振るったアニメーターで、ルパンを思い起こさせる描写を入れるなど、どうやら狙ってやったようですが…。

 さて、話は変わって息子が3歳の時。公園で遊んだ後、顔の泥をカミさんが濡れたハンカチで拭いてやっていると

 「もしみたいだね」と言いました。

 失神しているルパンの顔を、クラリスが濡らした手袋で拭いてやる時の「もし」という呼びかけを彼は思い出し、「『もし』みたいだね」と言ったのです。そんなもの何で思い出すかねえ。

 私の部屋のDVDの棚には、日本全国の乳幼児の友「となりのトトロ」だってあるというのに、なぜか「カリ城」の方を引っ張り出しては繰り返し視聴し、果ては特典ディスク収録の絵コンテまでのぞく始末。「その体には俺と同じ古いゴートの血が」(byカリオストロ伯爵)流れ込んじゃったのかも知れません。

 現在小1の息子は、「ファーストルパン」(71年の最初のテレビシリーズ)を視聴中で、かなり気に入った様子。不二子ちゃんが裸にひんむかれるカットがあったりして、お父さんとしては少しドキッとしますが、思い起こせば私も小1くらいのころ普通に面白がって見ていたので、まあいいか。

プロフィール

小原 篤(おはら・あつし)
1967年、東京生まれ。91年、朝日新聞社入社。99〜03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。08年4月から編集局編集センター員。

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