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豊島(てしま)

 湧き水に恵まれ、古くから稲作を中心に酪農、野菜作りと自給自足の生活を営んでいた、文字どおり豊かな島、豊島。 荒廃していた棚田も再生され、2013年夏には家浦地区に豊島横尾館が開館、島滞在の作家による作品も加わった。 自然にアートに人に、人口1000人以下の小さな島は、さまざまな魅力にあふれていた。

男木島を望む豊島

 高松から直行の高速船で30分ほど、豊島・家浦港の小さな桟橋に降り立った。 目の前には平屋の家々が並び、その間を小型車でも通り抜けが難しそうな細い道が続く。 港近くで電動補助付き自転車を借り、いざ出発。ペダルを強く踏み込んだ。

家浦
  • イル・ヴィント
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イル・ヴェント

 トビアス・レーベルガーの「あなたが愛するものは、あなたを泣かせもする(日本フランチャイズバージョン)」の中で食事ができるカフェ。壁や床、家具にあふれる模様や直線は、家の立方体とはずれた遠近感を演出し、近未来的なデザインとも相まってまるで宇宙船にいるのような感覚を与えてくれる。食事をすれば、鑑賞料300円は不要だ。ランチのセットメニューのほか、オリーブソーダやワイン、ビールもある。

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石上純也

mountain project

 白い倉庫のような建物に入ると、壁には山や木々の画像が並び、中央部には白い骨組みのような模型が吊される。 石上さんが「ナスカの地上絵のように自然と人間が調和したものをつくりたい」と豊島を想定し構想を進める「空中歩道」。 歩道は実際に建設すれば全長5、6キロにもなるといい、模型に置かれた指先ほどの小さな人がその規模の大きさを物語る。「小さな人」に自分を重ね、山の上空を歩く時を想像するのも悪くない。

豊島横尾館

横尾忠則/永山祐子

豊島横尾館

 港から見える煉瓦の塔を目印に進むと、赤いガラスが印象的な豊島横尾館がある。外からも見える赤いガラスには、背景と一緒に自分が緑の影とともに映る。未来から自分を見つめているようなノスタルジックな世界。異世界感は既に館外から始まる。

赤い煙突

 赤い煙突の内壁にはびっしりと滝の写真13000枚が並び、上下には鏡が張られている。 底なしの滝のような風景を前に、ついつい足を踏み出すのが怖くなる。おそるおそる足を進め、薄暗い「滝」の中に立つと、止められた時間にぽっと浮いたような不思議な感覚がした。

 横尾さんによれば、煙突は男根の象徴、コイも泳ぐ赤い庭は女性の象徴だ。交わる母屋には、春画を模した作品が飾られ、開館イベントの日には、お供えものが並んだ。

いちご家

いちご家の「いちご氷」

 イチゴ農家が経営するお店。豊島産のいちごでつくったジャムやソースを使ったアイスクリームやクレープを提供している。出てきた氷はふわふわで、上にも下にもかかる自家製ソースにはいちごのつぶつぶが見える。屋台などで食べるいちご味のかき氷とは全く違い、自然な甘みといちごの風味がのぼせそうだった体に染みた。

家浦 唐櫃(岡)
唐櫃の清水

唐櫃の清水

 豊島の豊かな水を象徴する場所、唐櫃の清水。小高い丘から湧き出る水は、弘法大師がこの地を訪れた際に掘ったという言い伝えが残る。現在一部が残る石組みは、以前は、飲料水用、野菜を洗う場所、洗濯場と細分化され、最後は田んぼに流れるように造られていたという。「子供の頃など、近隣の人はよく担い(桶)をかついで、清水に水をくみに行っていたよ」と近くに住む三好正文さん(60)。水道が整備された現在でも、地区の人が定期的に掃除をし、大切に守っているそうだ。

  • 空の粒子/唐櫃
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  • 空の粒子/唐櫃
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青木野枝

空の粒子/唐櫃

 唐櫃の清水すぐ横にある彫刻作品。見上げる場所にある円は、空をのぞくレンズのようでもあり、天から注ぐ水を象徴するようでもある。昔は近所の女性たちが集まり井戸端会議の場となったところだ。8月にはスイカなども提供され、その頃のにぎわいを取り戻したという。