【松尾慈子】今回、反則技です。すみません、これ、初出は1990年。いまからもう四半世紀近く前です。でもいいじゃないですか! これはいわゆる「June」でなく、「ボーイズラブ(BL)」黎明(れいめい)期の黄金作品なのです。それに、以前は冬水社という、大手の取り次ぎが扱っていない出版社が出していた。今回、幻冬舎コミックスから新装版が出たことで、ようやくネット書店でもあなたの近所の書店でも注文できるようになったのよ!
もちろん、少年愛作品の金字塔といえば、70年代の「風と木の詩」(竹宮恵子)と「トーマの心臓」(萩尾望都)なのは分かっていますとも。でもね。表題作は、90年前後から登場した、舞台は現代、男同士であることにちょっと悩みはするけれど、結局はラブラブハッピーエンド! という、BL商業作品の基本形をつくった作品群の一つなのだ! と私は思っている。出版社が小さかったせいであまり注目されなかったが。それ以前の時代の「June」系と言われる、基本的には退廃的で、悲劇に終わる作品群とは、まったく違う流れなのだから。まあ、表題作も、本当の初出は同人誌なのだけれどもね。
いや、もう中身は古いです。なにしろ当時はバブル時代。おねーさんはボディコンスーツにワンレンの髪だし。男性のシャツの袖もだぶだぶ。主人公の片割れなんて、新入社員なのにダブルのスーツ着てるんだぜ。時代の古さに寛容でいられる大人の方だけ、お読みください。

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、大阪編集局記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。