■評:グロテスクで甘美な地獄絵
【西本ゆか】無邪気な日々の一番最初の恋人として、優しい母、頼もしい父が浮かぶ人は多いだろう。だがコウノトリは赤ん坊を運ばないと気付く頃には、親が女であり男である事実がおぞましく、直視に痛みを伴う現実となる。若き日の美しい母の姿をもつクローンに愛された男の運命を、逃げ場のない円形舞台に閉じ込めた地獄絵図は露悪的でグロテスクで、でも心の奥底に甘美で危険な残像を残し、恐ろしい。
青木豪作、いのうえひでのり演出で一昨年上演した「斷食」を、同じ作・演出で改題改作。汚染された近未来、自然農法を続ける保(堤真一)は、保険外交員刈谷(田中哲司)から亡き母・朝子がクローン保険に加入し、万一の時に臓器をもらうクローン(麻生久美子)を作っていたと知らされる。処分できず夕子と名付けて引き取った彼女と保の奇妙な同居が始まる。