【松尾慈子】朝日新聞デジタルに原稿を書いていながら、私はデジタルにとんと疎い。先日も、全社員向けに「セキュリティー研修」というのがあり、要するに「朝日新聞社もサイバー攻撃にさらされているので、社員として気をつけろ」ということだったのだが、「おばちゃんそんな、電子電子したこと、よう分からんわ〜」と疎外された気持ちになって終わっただけだった。以前も年若い後輩から、「その件は、該当ページをスキャンしてPDFファイルで添付してメールで送って下さい」と言われ、「そんな電子電子したこと、おばちゃんには荷が重いわ〜」と思いつつ、なんとかこなしたばかりだというのに。
というわけで、世間は私を置いて去る。デジタルは世界を支配しているようだ。本作はコミュニケーション能力ゼロ、高校中退、でもハッキングの腕だけは天才的という18歳の是枝と、巨額な資産を持つ若い投資家・坂井が出会うところから話が始まる。坂井の目的は「IT業界じゃ1人の力で10億人、20億人の相手を動かす。(中略)世界征服がしたい。お前のその手で」。そうか、世界はいま、ITで支配できるのか。
是枝はひどく不器用で、感情のコントロールがきかず、自分の負の感情のままに、金融機関のシステムをぶっ壊し、政府機関のサイトを改ざんする。読者も、そんな是枝にハラハラさせられるのだが、坂井は「自分にイラ立つから余計クラッキング(破壊行為)に行くのか?」と、是枝に尋ねる。是枝は、犯罪行為をしたいのではなく、目の前の問題を解いている間だけは自分が自由になると感じている。その腕を、坂井は活用する道を思いつく。

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、大阪編集局記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。