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■評:兄になりすますサスペンス
【稲垣都々世・映画評論家】アルゼンチンの首都ブエノスアイレス。医師アグスティンは妻とともに裕福に暮らしているが、心は虚(うつ)ろ。そんな時、故郷ティグレからやってきた双子の兄ペドロが末期がんであることを告白し、殺害を依頼する。アグスティンは苦しげに吐血する兄を咄嗟(とっさ)に殺すと、兄になりすまして故郷へ向かった。
ティグレは首都から30キロほど北にあるデルタ地帯。大小の川が迷路のように流れ、因習と因縁が絡む閉鎖的な地域社会。誰もが顔見知りで噂(うわさ)はすぐに伝わるが、秘密が外に漏れることはない。兄と長らく絶縁状態だった弟の存在を知る者は少なかったが、兄が幼なじみの悪党アドリアンと誘拐ビジネスで稼いでいたため、アグスティンは犯罪に巻き込まれていく。