6月18日付で本紙東京本社版の社会面に掲載された「ニュースQ3」。最近のエンターテインメント小説で、読者が愛国心をくすぐられるような作品が目立ってきたことを挙げ、人気の背景を探った内容です。この記事について、作家の立場から考えを寄せていただきました。
◇
「家族小説が減っているのよ」
以前、ある文芸編集者がこぼした。その家族小説を、僕は主に書いていた。当時、僕の目には、なんとか光が見えていた。ところが、二年が過ぎ、三年が過ぎたころ、世界の変化をどうにもできなくなってしまった。家族小説が、まったく売れなくなったのだ。
今の日本においては、単身世帯がもっとも多いらしい。異性と付き合った経験がない人が増え続けている。結婚することも、子供を持つことも、当たり前のことではなくなってしまったわけだ。家族をテーマにした小説が、売れるはずがなかった。同じように、大人の男女を描いたものも、駄目になった。そもそも性は語られない。性とは成長の痛みだからだ。すべての痛みは今、排除される。
本紙面において「売れてるエンタメ小説 愛国心くすぐる」という記事を読んだとき、ついに気づかれてしまったと思った。僕たち作家は、ずいぶんと長く、見ないふりをしてきたのに――。記事において人気とされた作品は、結果として愛国になっているだけである。その実は逃避なのだ。愛する自分、摩擦なき場を守るため、都合のいい世界を作ったにすぎない。僕たちはそう、夢の国を求めているのだ。戦前、戦中の日本や、自衛隊が舞台となるのには、理由がある。強大な戦闘力を保持しつつ、軍隊と公言されない自衛隊。夢の国を作るとき、これ以上の舞台装置があるだろうか。