■昭和45年(1970年)
【杉本裕明】「ドンマイ!」「もう1球」。東京都杉並区の住宅街。東京立正高校のグラウンドからソフトボール部の女子生徒の声が響く。1970年7月18日昼過ぎ、ソフトボール部の生徒たちが次々倒れ、43人が救急車で運ばれた。都内で6100人が体の異常を訴えた。近所の堀内京子さん(74)は「息苦しくて横になっていた。パトカーも来て、『毒ガスか』と大騒ぎになった」。光化学スモッグが原因だった。
「犯人は車の排ガスだとピンときた」。都公害研究所(現都環境科学研究所)で電話応対していた早福正孝さん(71)は振り返る。大気中の窒素酸化物などが太陽光を受けてできる光化学オキシダントはこの日午前11時に0・29ppmの高濃度を記録。都内では窒素酸化物の排出量の7割を自動車排ガスが占めていた。