【松尾慈子】ヤマシタトモコがボーイズラブ(BL)界の新星としてデビューコミックスを出したのが2007年。それ以降、レディース誌、青年誌でも活躍するようになり、BL愛好家の筆者としては、少し寂しい気持ちで見守ってきた。でも、彼女のような、幅広い作品が描ける人は活躍の場が広がって当然なのだ、と自分を納得させてきた。
本作は、レディース誌「FEEL YOUNG」での掲載作品。帯にあるうたい文句通り、まさしく「怪作」である。恋愛漫画でもない、スポ根でもない。1人の少女の存在により、普通に生きる人々の暗部が明らかになってくる、心理ドラマなのだ。
主人公は手島日波里、14歳。年齢にそぐわない肉感的な体つきに、男性は劣情をそそられ、女性は悪意を覚える。日波里は父親のせいで家に居づらく、母親のいとこである完の家に入り浸る。完は日波里に惚(ほ)れられていると悦にいるが、完の恋人の富子は、日波里の男受けしそうな外見に敵意を抱く。次々登場する大人たちは、少女の存在により、心にしまっていた感情を引きずり出される。そして、富子に横恋慕する憲人は、偶然に日波里と接触し、意外な彼女の内面に触れる。

1992年朝日新聞入社。金沢、奈良支局、整理部、学芸部などを経て、現在、大阪編集局記者。漫画好き歴は四半世紀超。一番の好物は「80年代風の少女漫画」、漫画にかける金は年100万円に達しそうな勢いの漫画オタク。