■評:変革への夢 美しく苦く
【山本健一・演劇評論家】人に善なる服従の犬である盲導犬。権力に抗(あらが)う想像上の魔犬ファキイル。犬はもちろん、喩(たと)えだ。対照的な犬に託して、若者の変革への幻想を、猥雑(わいざつ)なロマンチシズムで描く。唐十郎が40年前に蜷川幸雄の依頼で書き下ろした「盲導犬」が、蜷川演出で再び上演された。
状況はがらりと様変わりした。例えば非正規労働者の増加。ボディーブローのように若者から変革への幻想を奪う。書かれた当時も、夢や未来を絶望の中で歌ったものだが、闇は更に深くなった。劇の情念は妖しく燃えているが、今を映すビビッドさが更に欲しい。